国会活動
2016.11.22 TPP特別委員会「大臣は、『予防原則に立てない』ということをごまかすための答弁をずっとなさっ ている」
2016年11月25日
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○山本太郎君 ありがとうございます。
今朝起こった地震によって被害に遭われました皆様に心からのお見舞いを申し上げます。
自由党の山本太郎です。世間では、分かりづらい、話に付いていけない、大評判でございます、このTPP。会派を代表して質問いたします。
恐らく、国会議員であっても理解されていない方々、勉強を諦めた方、たくさんいらっしゃると思います。この審議、ネット中継で御覧になっている方々も多数いらっしゃいます。どうか多くの人々が理解できるよう、簡潔に分かりやすくお答えください。
SPS、検疫について、TBT、表示について話を進めてまいりたいと思います。
資料の一でございます。(資料提示)
先日の質疑の中で、石原大臣の答弁なんですね。実際には資料にあるとおりの少し長めの答弁なんですけれども、これ、要点だけピックアップすると、TPP協定では、いわゆる予防原則について明示的には触れられていないと答弁する一方で、加盟国が食品の安全を確保するために必要な措置をとる権利が認められている、こうおっしゃった。
ちょっと何か難しいなと思うんですよ。このフルバージョンで見たとしても、これを聞いて何人の国民が正しく理解できるのかな。いや、国会答弁というのはそういうものなんだよと言われれば、まあそれまでなんですけれども、国民の理解を得られるようにと毎度呪文のように皆さんおっしゃっているわけですから、そこの部分、努力する必要があるだろうと思います。
シンプルに是非一言でお答えいただきたい、これ石原大臣の御発言なので、是非大臣にお答えいただきたいんです。ありがとうございます。TPPでは予防原則に基づいた食品の安全確保のための措置をとることができますか。できる又はできないでお答えください。
○国務大臣(石原伸晃君) 食の安全、これまでもこの委員会で今御議論が一番熱心にされてきている一つのテーマだと思いますが、我が国が、科学的根拠に基づいてこれまでもやっておりますし、これからもしっかりと規制せねばならぬということについては規制をすることができます。このTPP協定によってそれを動かされるものではない、このように御理解をいただきたいと思います。
○山本太郎君 こんな簡単な質問に対して一言で答えられないというのが非常に怪しい、そう思っちゃうんですよね。一言で答えられるんですよ。しかも、答えてほしいことを答えていない、質問に答えていない。
その答えていなかった部分についてお話しします。そもそも予防原則って何ですかということをお話しする。
環境や食品による人体などへの被害の重大性が科学的に完全には分かっていなかったとしても、予防対策としてそれを実施する、原因物質などを排除するという考え方、危険か安全かはっきり分からないものに関しては危険という認識を持って措置をする、これ真っ当な考え方ですよね。この予防原則に基づいた措置が人々の健康や生命を守るためにいかに重要か、私たちの国は身をもって経験している。つまり、予防原則の重要性は日本の公害経験からも明らか。
例えば水俣病。一九五三年頃、熊本県水俣市周辺で発生、たくさんの住人が水銀中毒による中枢神経障害を引き起こした。原因は、新日本窒素肥料が海に廃棄した廃液中のメチル水銀、魚介類で生体濃縮され、これを食べたことにより起こった。被害の拡大を防ぐ機会は何度もありました。ざっくり振り返ります。
一九五三年頃から猫が死に至る奇病が相次ぐようになった。三年後、五六年五月、原因不明の奇病が人間に対して多発しているという報告が病院から水俣の保健所に入った。これが水俣病の公式発見とも言われていますよね。その年の十一月、水俣病の原因は重金属中毒であり、魚介類の摂取によって人体に侵入、汚染源はチッソの水俣工場の廃液が疑われると熊本大学医学部研究会が報告。翌年八月、熊本県は被害の拡大を防ぐために、食品衛生法による水俣湾産魚介類の捕獲、販売禁止措置を厚生労働省に打診、しかし厚労省は、この地域の魚介類が全て有毒化しているという明らかな根拠が認められないので、当該地域で捕獲された魚介類全てに対して食品衛生法の規定を適用することはできない、そう言った。結果、どうなったか。被害はより拡大した。
一九五九年三月、水質保全法、工場排水規制法のいわゆる水質二法が施行。しかし、水俣湾周辺は推定水域に指定されず、アセトアルデヒド製造施設も特定施設指定されず、排水規制も行われなかった。魚介類の捕獲、販売が禁止されたのは一九七三年六月。最初の兆候として注目された猫が死に至る奇病から二十年もたった後、二十年ですよ。何度も予防原則に基づいた規制を行うチャンスはあったけれども、放置したことにより多くの被害者が発生した。
予防原則の非適用による典型的な失敗例として、アスベスト被害も有名ですよね。環境省自身も、アスベスト問題に関する環境省の過去の対応についてというレポートで、予防的アプローチができなかったことがアスベスト被害を拡大させた原因と認めている。
ほかにも予防原則に基づいた施策が行われず被害が拡大した事例は、イタイイタイ病、四日市公害、六価クロム鉱滓事件、土呂久ヒ素公害、カネミ油症事件、杉並病などなど、被害が確認されてから対症療法的に取り組んだのでは手遅れであり、取り返しが付かない。だからこそ予防原則が重要なんだということですよね。
ここで、通告した質問で聞くつもりだったんですけれども、時間がもうないので、そのまま進みます。
何を聞いていたか。遺伝子組換え作物による健康被害はあったんですかということを聞いた。そして、そればかりでなく、日米並行協議で一年以内に承認を完了させる約束をした四つのアルミニウム添加物に対して健康被害はありますかという質問をした。それに対する答えはもう分かっているんです。「ない」。「ない」なんです。どうしてか。人体に影響があると科学的根拠に立脚したものでなければ人体に影響があるとは言い切れないので、ないという答えになる。遺伝子組換え作物は御存じのとおり諸説あり、虫も食わないものを子供に食べさせるのか、そういう人々もいる。そして、早速アメリカ様に差し上げた、一年以内に日本の承認を完了しなさいよという四つのアルミニウム添加物のうちの一つはEUでは禁止されています。
予防原則に立ち、もっと慎重になるというスタンスが必要なのに、何か違う方向行っていませんか。国民の健康と生命を守ることにつながること、予防原則に立つ以外ないんだって話なんですよ。
続いて、先ほどの発言から、大臣にもう一度お聞きしたいんですね。資料一にある以前の発言。TPPのSPS規定は、WTOのSPSと同様の措置をとる権利が認められる。ここからです、聞きたいことは。つまりは、予防原則に基づいた措置もとれるという理解でいいですか。イエスかノーかでお答えください。先ほど長い答弁を返された紙さんのときにも、イエスかノーかで言ってくれたら答えるのにということをおっしゃっていました。予防原則に基づいた措置もとれるんですか、WTOと同じようにということですよね。そういうことでよろしいでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) 私も水俣には何度か御訪問させていただいておりますけれども、いまだに多くの方々が苦しんでいる、そしてその病を科学的に実証することができずに、当時と今のテクノロジーの差というものはありますけれども、昭和四十数年まで放置していたということには、今行政府の中にいる一人として深く反省をしているところでございます。
その上で、先ほども御答弁をさせていただきましたとおり、我が国の規制に対して、このTPPは排除しているわけじゃないんですね。そして、委員の御指摘は予防原則についてでございますけれども、もちろん科学的に実証できたものについては誰からも文句言われない。しかし、情報を集めるわけです、入手可能な適切な情報を。それに基づいて暫定的な措置をとるということを排除しているものではないということも再三御答弁させていただいているところでございます。
○山本太郎君 ごめんなさい。また答えてくれていない、はっきりと。予防原則に立てるのか立てないのか、どちらなんでしょう。立てるか立てないかでお答えください。
○国務大臣(石原伸晃君) 何度もお話をさせておりますけれども、TPPの問題で、このSPS章においても、あるいは委員御指摘のWTOのSPS協定と同様に暫定措置をできるというふうに考えております。
ですから、委員のお答えに対する答えはもう既にしっかりと申し述べさせていただいております。
○山本太郎君 はっきり言ってくださいよ、じゃ、「予防原則に立てます」って。お願いします、大臣。
○国務大臣(石原伸晃君) 法案の文言がどうなっているかということに立って、私は法案を担当している、十一本の法案を担当している大臣でございますので、このTPA協定の方については、その協定の解釈についてお話をさせていただいている、御答弁させていただいたとおりでございます。
○山本太郎君 大臣はうそを言われていないんですよ。遠回しに予防原則に立てないということしか言っていないんです。予防原則に立てないということをごまかすための答弁をずっとなさっているんですよ。
どういうことか説明します。
TPPのSPSの規定がWTOのSPSと同様であるならば予防原則は適用できませんよ。なぜなら、WTOでは予防原則が否定されたから。リスク分析、つまりは科学的根拠に立脚したデータなどを示すことができなければ規制することができないということですよ。これは予防原則とは全く違う考え方ですよね。政府は、上手にその二つ混ぜ合わせながら、いかにも予防原則に立つことが排除されていないような雰囲気をつくっているけれども、でたらめじゃないですか。
余りにも有名、先ほどほかの委員からも話があった、アメリカがEUを訴えたホルモン牛の輸入制限事件において、WTOで明確に予防原則否定されているじゃないですか。
ざっくり説明します。
この事件では、EUは成長ホルモンを投与した牛の肉を発がんのリスクがあるということで、健康リスクを理由に輸入制限。このEUの措置がWTOのSPS協定に違反するとして、アメリカとカナダがEUを訴えた。このときEUは、予防原則というものが国際慣習法として定着しており、予防原則に基づく措置はSPS協定違反にならないと主張。結果、どうなりました。完全に敗北じゃないですか。
石原大臣言うところの、TPPのSPS協定の規定はWTOのSPS協定と同様であるならば、TPPにおいて、ホルモン牛輸入制限事件で明らかになったとおり、予防原則に基づいた措置はSPS協定違反となる。リスク分析でのみ、つまりは科学的根拠に立脚した証明責任を果たすことができた場合のみ、新たな規制が掛けられる、食の安全や健康に対する脅威を止めることができる話になる。
検疫に関するTPP協定文の第七章九条二項、客観的で科学的な根拠に基づいていることが該当する部分じゃないですか。報復関税掛けられてもいいんだと、国民の生命と命を守るというなら別ですけれども、その気概、安倍政権にあるとは思えませんよ。その場しのぎで言ったとしても通用しません。
例えば子宮頸がん、このワクチンで副反応で苦しむ少女たちに対して、大胆な救済行われていますか。ワクチンの勧奨再開を狙っている状況を見ただけでも、それははっきり言えること。日本独自の食品や環境の基準、表示を採用するためには、客観的で科学的な根拠に基づいていること、つまり人体に影響があるという蓋然性がはっきりしなければならない、その立証責任を果たさなければならない。それらが果たされないまま基準や表示を行った場合は、当然、ISDSで訴えられる可能性が出てくる。
でも、政府はこう言っている、ISDSについて。第九章投資の章にのみ適用する、投資の章以外は関係ないと言っている。でも、そうですかって。SPS、TBT関係ない、ISDS関係ないって言っている。お花畑かよって。ほかの章の違反であっても、投資財産を持っている外国投資家が損害をかぶれば、第九章の投資の章に規定された内国民待遇、公正衡平待遇義務や収用の禁止に違反するという主張によってISDSで訴えられる可能性、十分じゃないですか。
フィリップ・モリスとオーストラリア政府の話。たばこのパッケージに関して訴えたでしょう。たばこのパッケージは本来たばこ会社が自由に使えるけれども、けれども、政府がパッケージの一定の面積を使って喫煙は健康リスクがあるといった表示をしろと要求した。それ、パッケージの表面、奪い取ったことと同じだよ、間接収用ですよということで訴えられたじゃないですか。政府が言うISDSは第九章、投資の章でしか使われないというのは詭弁なんですよ。
言いたいことは山ほどあるんですけど、その先に進みたいんですね、もう時間がないんで。
お聞きします。このISDS、非常に危険。それだけじゃなくて、SPS、要は歯止めがない、予防原則が使えないSPS協定、そして幅広く投資先の政府を訴えられるISDS条項とが組み合わさるというのは、これ危険極まりないのは明らかですよ。じゃ、どうすればいいですかって。せめてISDSを使えないようにしたらどうですかって。そういうこと、できないんかな。
お聞きしたいんですけど、TPP加盟国同士でISDSをお互いに使わないというふうに約束しているような国って存在しないんですか。大臣、御存じですよね、教えてください。
○国務大臣(石原伸晃君) ISDSについては、互いに投資家が相手国を訴えるという制度でございます。
そして、委員はすごく曲解されておりますので、是非条文を読んでいただきたいと思います。第七条、第九条、科学及び危険性の分析。衛生植物検疫措置の適用に関する協定の関連する規定に基づく締約国の権利及び義務を認めつつ、この章のいかなる規定も、締約国が次のことを行うことを妨げるものを解していない。ここに(a)、(b)、(c)とありますので、(c)だけ読ませていただきます。「衛生植物検疫措置を暫定的に採用し、又は維持すること。」。先ほど御答弁させていただいていますとおり、暫定的な措置を導入することが可能であるということで、委員の解釈が間違っていると御理解いただきたいと思います。
○山本太郎君 WTOと解釈が一緒なんだから、予防原則守られないのは当然じゃないですか。そんなこと言ったって無駄ですよ。このままか緩めるかどちらかじゃないですか。当然です。
先ほどのお答えいただいていませんよ。質問にも答えずに一体どういうつもりなんですか。分からないから答えなかったんでしょう。
どの国がTPP、このTPP合意後に、このISDSに……
○委員長(林芳正君) 時間が参っておりますので、おまとめください。
○山本太郎君 済みません。
ISDSに対して、TPP合意後、ISDSを使わないでおこうという二国間の合意をした国がオーストラリアとニュージーランドですよ。それも答えられないんですか。
委員長、済みません、理事会でお諮りいただきたいんです。もっと詳しい甘利さんを呼んでください。お願いします。
○委員長(林芳正君) 後刻理事会で協議します。
○山本太郎君 終わります。
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