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「Profiting from injustice」Chapter 7 (英日翻訳文)
2016年12月08日
第7章
結論とコメント
投資仲裁業とは、中立の立場という幻に築かれた儲かる業界だ。
国際投資仲裁の存在については、これが多国籍企業と政府との間の紛争を解決するための政治的色彩のない中立の場所を提供するという論拠に大いに基づいている。投資協定によって、会社だけが国際仲裁廷に国を提訴できることを考えると、この前提は、常に欠陥があり、社会に影響を及ぼすものであっても、政府は、同機構を利用できないのである。
企業投資の魅力のために、政府は数多くの国際投資協定に署名することを説き伏せられているが、それが、投資協定の事件のブームの火種となっているのだ。本報告書が示すように、これが、強力で非常に儲かる仲裁業界へとつながるのである。
仲裁業界の役割
しかし、仲裁の中立性と言われるものは、謎である。エリートの仲裁人からなる小さなグループが出現し、自らが中立な「審判官」であると約束するのだが、仲裁人のWilliam Parkが言うように、「人々は、その富と幸福を仲裁人に任せている」のである。しかし、その代わりに、そうした仲裁人は、その権力と影響力を利用して、政府に敵対する規則と多額の訴訟が常に起こることを保証するのである。また、これには、数多くの国際的な法律事務所も関与しており、国に対する仲裁を増大させている。投資資金は、投資仲裁市場を統合し、投機的な請求をもたらしている。
その結果、国は、既得権が形成する制度で市民の権利を擁護しなければならない。多くの開発途上国の社会では、仲裁が課す金銭上の罰金と費用のために、税金を転用している。恩恵を被る者といったら、会社と投資弁護士ぐらいだ。
投資弁護士は、その100万、1,000万といった給与の拠り所となっている、抜け目のない不公平な制度を積極的に推し進めている。本報告書が示しているように、投資弁護士は、以下のような活動を行っている。
・積極的に事件を奨励し、時には、会社が仲裁を行うように推し進め、投資協定の抜け道を探し、紛争解決の膨大な件数と費用を生み出すこと。
・背後にいて、国が投資協定を採用するように推し進めること。
・仲裁人による投資家寄りの解釈の範囲と紛争の機会を増やすような、投資協定の曖昧な文言の使用を促すこと。
・公益というよりは独占に近い商業上の視点から投資法にアプローチする傾向があり、人権および持続可能な開発に基づく主張を無視し、非難すること。
・学術機関および公益に仕えるような改革に抗するロビー活動を通じて、投資協定および仲裁の現行の制度を維持し、拡大するために積極的に首尾よく闘うこと。
・投機的な投資基金で仕事をし、国や納税者を犠牲にして、会社がさらに提訴するための資金を提供すること。
こうした活動は、現在の投資協定の会社寄りの考えを確認するだけでなく、本制度を大手の多国籍企業がさらに有利になるように仕向けている。その結果、正義の配分というよりは、商業上の利益に駆られた制度が出来上がったのである。
変更の範囲
企業の過度な金融制度の支配と短期的視野の資本の規制緩和からの巨額な社会費用に世界が遭遇しているときには、規制緩和と会社の説明責任の呼び声が増える。投資協定がその根本原因であるばかりでなく、当該協定は、政府がそれを解決することを阻止しているのだ2。投資体制の徹底的な見直しが必要である。
政府が、現在、公益を犠牲にして会社に恩恵を与える制度に賛同しているが、政府は、それを変更する権限を有している。人々の必要性を満たす魅力的で生産的な投資の目的は、投資協定の現在の欠陥のある枠組みの流れでは、実現できない。
それは、政府がブラジル、南アフリカ、ボリビアおよびエクアドルなどの国の例に従うことであり、こうした国々は、政府国際投資協定を終了させるのでも、既存の協定を終了させるのでもなく、新しい協定に署名しないと誓約しているのだ。または、政府は、オーストラリアの例に従い、投資家と国の紛争解決プロセスを投資協定から除外し、会社が国際仲裁廷で国を訴ることを阻止することだ。
現行の国際投資体制の内でも、投資弁護士と法律事務所が現行の投資家と国の紛争制度を搾取することを妨げるのに役立つような選択肢が数多くある。
・投資紛争は、独立した透明性のある審判機関により解決することができ、開廷時の「審判官」は、その独立性と公平さが客観的に保証されている。「審判官」の名簿は、世界で国ごとに示している。
・より厳しい利益相反規制があり、それには、名簿上の奉仕期間中だけでなくその期間の前後少なくとも3年間(クーリングオフ期間)は、投資事件で弁護人と専門家のいずれもなしえないことを要求する、投資仲裁人の拘束力のある行為規範が含まれている。
・弁護士と仲裁人の費用に上限を課すべきこと4。
・仲裁人が特定の義務に関して投資家寄りの拡大解釈をすることを防ぎ、国に規制するための政策余地を与えるためにも、委員会と投資協定に使用される曖昧な規制用語を明瞭にすること。
・環境上の権利および人権などの問題、影響力評価、および健康、環境、労働および租税問題に関するすべての地方および国内法の遵守について、投資協定に、拘束力のある投資家の義務を含めること。
・政府は、法律事務所、法律クラブおよび個別の仲裁人を含めて、投資政策に関する仲裁業界のメンバーに対して、会合に関する先見性のあるロビー活動の透明性を提供し、そのメンバーから受けた助言を提供しなければならない。
こうした提案は、投資仲裁の中立性と公平性を増大し、利益相反に取り組むことを目指している。これらは、法的には実行可能である。しかし、企業界および仲裁業界のほとんどの者からの抵抗を受けており、これらの業界の者は、その利益を抑制するような試みに反対しているのだ。投資弁護士は、仲裁部会、政府、学術機関、政策決定およびメディアに深淵な影響力がある。投資弁護士は、現行の制度から金銭的な恩恵を受けており、現状に挑むような変更を望まないようである。
しかし、こうした改革案は、国際投資体制の言語道断な不正義に取り組むには不十分である。そうした不正義とは、国内の裁判所外で、立法、行政および司法の決定を脅かし、その決定に対して訴えを起こす海外投資家の独占権であり、また、人権と環境上の権利の違反が生じたときに会社の刑事免責に取り組む機構が社会に欠如していることである。
投資家と国の仲裁からそれらを除去しないと、その残り部分は、ビック・ビジネスや強力で非常に儲かる仲裁業界に有利なように歪んだままになろう。
“投資家と国の仲裁制度を創造し、権限を付与する協定に署名する文言は、その交渉の対象を言い当てていない。というのは、中に入って、投資家と国の仲裁制度という怪物を飼い馴らそうとする必要があるからだ。”
投資仲裁弁護士5
第7章 脚注
1 Marais, Jana(2012年)、南アフリカ、欧州連合が争う。Business Times、9月23日、http://www.bdlive.co.za/businesstimes/2012/0923/south-africa-european-union-lock-horns (2012年10月17日)
2 Gallagher, Kevin(2010年)、貿易および投資協定における金融危機の防止と軽減のための政策余地、UNCTAD G-24 Discussion Paper Series、第58号、5月
3 このための具体的な提案はすでに出されている。ラテンアメリカの地域協定のUNASURの作業部会は、投資紛争を解決するための常設仲裁廷を提案しているが、そこでは、選定された仲裁人は、他の立場を兼ねることが許されていない。Osgoode Hall Law SchoolのGus Van Harten教授は、既存の制度に代わる国際投資裁判所の考えを進めている。以下を参照。Fiezzoni Silvia Karina(2012年)、UNASUR 仲裁センター、現状とエクアドルの提案の主要な特徴。Invest]ment Treaty News、1月12日、http://www.iisd.org/itn/2012/01/12/unasur/ [2012年10月17日]、Van Harten ,Gus [2008年] 国際投資裁判所関連のある事件、http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=1153424 (2012年10月17日)
4 UNASUR内では、訴えられている国の利益を代表する法的諮問機関を提案しており、WTOの紛争の法的解決センターのモデルに従うもので、そのサービスは、国際法律事務所の費用よりも10倍も安い。別の解決案は、訴訟費用の上限を設定する国際基準の創設である。
5 以下に引用されている。Van Harten, Gus(2010年)、学術専門家は、投資協定の改革を呼び掛けている。http://triplecrisis.com/reform-of-investment-treaties/ (2012年10月15日)
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