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「Profiting from injustice」Chapter 1 (英日翻訳文)
2016年12月01日
第1章
はじめに
“裁判が地獄で行われている間は、悪魔を裁くすべがほとんどないのです。”
1831年アイルランド人の日記 Humphrey O’Sullivan
裁判が地獄で行われているときに、悪魔と一緒に裁判を行うのか。もちろん、そうではない。しかし、政府は何百回も、それをやり続けているのだ。
国際投資紛争では、政府が多国籍企業の利益を害するようなことを行ったとき、当該多国籍企業は、政府を訴えることができる。例えば、大手たばこ会社のPhilip Morrisは、ウルグアイとオーストラリアがたばこのパッケージに健康上の警告を行うことを義務付けたために、同国を訴えている。エネルギー会社のVattenfallは、ドイツが段階的に原子力を廃止することを決定したため、同国を訴えている。
これらの事件は、仲裁人からなる仲裁廷で行われるが、その3名の仲裁人が私益か公益のいずれが最も重要であるかを決定する。世界中で、これらの仲裁廷は、納税者の財布から何百万ドルものお金を大会社に提供している。そして、これらの多くは、環境、公衆衛生または社会福祉を守るために民主的に制定された法律が会社の利益に影響を与えたとして、補償を求めるものである。
これらの紛争の法的基礎は、国家間の投資協定である。歴史的には、西側諸国の政府が、会社の海外投資を保護することを望み、この協定を導入した。会社は、現地国との問題に遭遇したときに、投資家が公正で独立した紛争解決の制度にアクセスできることを望んでいたのだ。現地国の裁判所は、偏見や遅延、ときには腐敗が深刻で、その役割を果たすことができないと考えられていた。そこで、法律の専門家からなる「中立な」団体という考えが生まれ、それが仲裁人であり、独立した仲介者として行動すべき者なのだ。
投資仲裁は、多国籍企業と政府の間の紛争を解決するための公正で独立した場所と考えられている。この考えが、この投資仲裁という仕組みを正当化する主な根拠の一つである。しかし、この仕組みが、納税者にかなりの負担をかけ、国民の利益のために行動する主権国家政府の能力を弱体化しているのだ。
本報告書は、投資仲裁の公正・独立といわれるものが幻想であると述べている。法律事務所、仲裁人、最近では、紛争から巨額のお金を得る投機家集団が、法律とその紛争の大部分を形成している。こうした「仲裁業界」は、その自らの利益に駆られて、積極的に会社の請求を促し、必要な法律上の抜け穴をつくり、そうした仕組みが継続して機能するように資金を投じるのである。また、本業界は、協定を投資家寄りに解釈して、自らのビジネス拡大にも一役買っている。そして、投資弁護士は、投資仲裁を維持するために、学術機関や、公益のための改革に対する直接のロビー活動を通じて、批評家に抗して闘っているのだ。
確かに、国は、投資協定に署名し仲裁に同意しているため、地獄にいる悪魔の訴えを受けることになる。
投資仲裁弁護士、仲裁人および資金提供者は、世間の注目からうまく逃れている。その事件の多くは知られておらず、一切公表されないものもある。その行為の背後にある既得権は、司法の独立に関する法律上の修辞という厚い壁により覆い隠されている。だからこそ、世界の投資規則の不正義を駆り立て、そこから利益を得ている仲裁業界の主役に注目するときなのだ。
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