国会活動
2023.5.31 東日本復興特別委員会「加害者が線引きするハリボテの復興」
2023年05月31日
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○山本太郎君 れいわ新選組、山本太郎です。
東電事故の前、現在の帰還困難区域にお住まいだった方々にふるさとに帰還していただく取組が本法案の趣旨の1つです。これについて、その感想を30秒以内で、加害者である東電副社長にいただきたいと思います。
○参考人(山口裕之君) 東京電力ホールディングスの山口でございます。
福島第一原子力発電所から12年が経過いたしましたけれども、今もなお広く社会の皆様に多大なる御心配、御迷惑をお掛けしましたこと、本当に心よりおわびを申し上げます。
また、当社の事故によりましていまだ避難を余儀なくされている方々がいらっしゃるということにつきまして、本当に深くおわびを申し上げるとともに、引き続き、御帰還に向けた取組に対して、国の政策に基づいて御協力をさせていただきたい、そのように考えてございます。
○山本太郎君 放射線量が高過ぎるために帰還困難区域を全域解除するっていうのは難しい。そこで政府が考えたのが、2段階に分けて人を帰す政策。
まず、第1段階、特定復興再生拠点設置。駅周辺などに設置した拠点区域だけ除染、整備して、避難指示解除。そこに集中的な帰還、新規定住を促す。その拠点区域の面積は、大熊の場合、町の面積の約11%、双葉の場合、町の面積の約15%、浪江の場合、町の面積の約3%。
そして、第2段階、今回の法改正。特定帰還居住区域の設定。復興拠点の外に自宅がある人も、帰る希望があるなら、その部分だけ除染を追加して避難指示を解除すると。
そもそも、帰還困難区域とは何でしょうか。
資料の①、平成24年内閣府防災白書を見てみると、帰還困難区域とは、避難指示区域のうち、5年間を経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある、現時点で年間積算線量が50ミリシーベルト超の区域である、同区域は将来にわたって居住を制限することを原則とするとあります。
現在の帰還困難区域の定義も、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある、年間積算線量が50ミリシーベルト超の区域ということでよろしいでしょうか。定義が変わったなら変わったと言ってください。
○政府参考人(片岡宏一郎君) お答えいたします。
帰還困難区域につきましては、平成23年12月の原子力災害本部決定におきまして、御指摘のとおり、長期間、具体的には5年間を経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある、現時点で年間積算線量が50ミリシーベルト超の地域として当時設定されたものでございまして、現在もその定義は変わってございません。
○山本太郎君 帰還困難区域は、2011年12月時点では50ミリシーベルトを超えた地域だと。あれから12年経過して、現時点では、帰還困難区域はおおむね50ミリよりかは下がってるんじゃないかなっていう多分感覚だと思うんですよね、政府的には。ただし、事故から5年間を経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのあるというこの評価に関しては、これ、元の定義のまま引き継いでいるって考えていいと思うんです。
帰還困難区域の話をしている途中ではあるんですけれども、放射線管理区域というものについてお話をさせてください。
放射線業務従事者と言われるような放射線物質を扱うことが仕事の人々が働く現場、この中では飲み食いも禁止、寝泊まりも禁止です。
東電の副社長にお聞きします。柏崎刈羽原発では、放射線管理区域内での寝泊まり、これ許されてますか、飲み食い、許されてますか。
○参考人(山口裕之君) お答えいたします。
放射線管理区域につきましては、持ち込むものについてこちらの方でしっかりと把握をさせていただいた上で入っていただいておりますけれども、飲み食い原則禁止だというふうに認識してございますが、場合によって、中で、放射線区域内であっても限られた範囲で飲食をすることは可能な場合もあるというふうに認識してございます。
○山本太郎君 ありがとうございます。
作業の内容によってはそういうこともあり得るかもしれないと。でも、それってポピュラーなことですか、よくあることなんですか。
○参考人(山口裕之君) お答えいたします。
先ほども申し上げましたけれども、限られた範囲でちゃんと管理に基づいて実施をしてございますので、ポピュラーかどうかということはちょっとお答えづらいんですけれども、しっかり管理の下で行われているというふうに認識してございます。
○山本太郎君 限られた範囲においてしっかりと管理した上でそれをやっているんだということでした。
じゃ、逆に、放射線管理区域の中で24時間365日居続けるということは認めてますか、東電として。いかがでしょう。
○参考人(山口裕之君) 申し訳ございません、今正確なお答えを持ち合わせておりませんけれども、労働条件等の関係も考えましても二十四時間ということはないというふうに思っております。
○山本太郎君 労働条件どころか、もうこれ電離則的に絶対にあり得ない話ですね。あり得ないと思いますよ。ないですが答えです。ありがとうございます。
これ、放射線管理区域は、毎時2.5マイクロシーベルト、3か月で1.3ミリシーベルト、年間では5.2ミリシーベルトになる。ただし、これは1日8時間、週5日間の勤務、滞在を前提として年間5.2ミリに達するという話。その約10倍を超える環境が事故直後にあったのが帰還困難区域です。そして、事故後5年以降も20ミリシーベルトを下回らないおそれがある。つまりは、放射線管理区域の4倍以上の汚染を下回らないおそれがあるという定義は今も引き継がれています。その帰還困難区域に人を帰すというのが本法案の趣旨です。
資料の②。
事故から5年後、平成28年度の復興庁の帰還困難区域の入域管理・被ばく管理等事業、補足資料。この入域管理、被曝管理を行う根拠として、帰還困難区域は当該区域の汚染レベルが極めて高く、住民に避難の徹底を求める観点から、原子力災害対策本部決定に基づき、区域境にバリケードなど物理的な防護措置を実施とあります。
帰還困難区域では入域管理・被ばく管理事業が行われているというんですけれども、これ簡単で結構です、入域管理・被ばく管理事業、簡単に、簡単に説明してください。
○政府参考人(片岡宏一郎君) お答えいたします。
御指摘の帰還困難区域の入域管理・被ばく管理等事業につきましては、平成23年12月26日の原子力災害対策本部における決定を踏まえまして、帰還困難区域の区域境界にバリケードといったような物理的な防護措置を実施をし、住民に対して避難の徹底を求めているものでございます。
また、可能な限り住民の意向に配慮した形での一時立入りを実現するために、スクリーニングを確実に実施するとともに、個人線量管理や線量に応じた防護装備の着用など安全性を確保した上で、現在でも事業を継続して実施してございます。
○山本太郎君 今お聞きいただいたように、今でもそれらは継続されていると。
これ、現在も入域管理、被曝管理を行っている。つまりは、帰還困難区域は当該区域の汚染レベルが極めて高いというこの状況評価、これ変わっていないということでいいですよね。
○政府参考人(片岡宏一郎君) 帰還困難区域につきましては、平成23年当時に、被曝管理などの観点から区域境界にバリケードといった物理的な防護措置を実施をしておりまして、住民に対して避難徹底を求めた上で一時立入りの管理を行うものとして、これは現在も行ってございます。
なお、現在、帰還困難区域においては、年間積算線量が50ミリシーベルトを超えている地域はほとんど存在してございませんで、20ミリシーベルトを下回っている箇所も存在すると認識してございます。
○山本太郎君 でも、現在でも継続して実施しているわけでしょう、入域管理・被ばく管理事業。
50ミリ超えているというところが下がってきたというのは実際に認めているけれども、20ミリも下回っているところもありますって、でも、20ミリとか50ミリとか、感覚おかしくなっていません。麻痺しているんじゃないですか。事故前から考えてみて。で、普通に原子力の事業者の人たち、考えてみて。おかしいでしょう。そういったところで線量が下がったからって、生活戻れということ自体がおかしいんですよ。むちゃくちゃですよ。そんなこと許されていないでしょう。
仮に一部放射線量が低下しても、周辺には汚染レベルが極めて高いエリアが残っている。極めて高いとは言えないといいますが、放射線管理区域の基準、年間5.2ミリシーベルトを確実に下回る状態、これ最低限でも保証しなければ、これ帰還促進するのおかしいんですよ。だって、一般公衆ってどれぐらいでしたか。1ミリに抑えなきゃ駄目なんじゃないですか。確実におかしくなっていますよ、感覚が。
復興庁の法案概要資料によれば、市町村長の策定する計画に基づき、帰還住民の日常生活に必要な宅地、道路、集会所、墓地等を含む範囲で特定帰還特別区域を設定、放射線低減を行う。これ、農地とか住宅周辺の山林は含まれないと。帰還困難区域に帰るか帰らないか、判断迫って、帰りますと言った人だけ、家の周りちょこちょこっと除染してあげる、そんな法改正ですよ。
帰るかどうか迷っている人の地域の汚染はそのまま放置。政府自身も、この汚染引き起こした責任、問われているはずですよ。それにもかかわらず、今すぐ帰る意思示さないなら除染してやらないって、何様。加害者なんですよ。
資料の⑤。
政府は、帰還困難区域が設定されている大熊、双葉の住民に帰る意思があるかを、あり、なし、保留の3択で調査。両町とも、回答世帯の半数以上が帰還意向なし。双葉44世帯、大熊120世帯。あるいは保留、双葉75世帯、大熊77世帯。これ、保留という回答の多さ、えらく目立ちません。
そして、帰還希望を示す世帯は、大熊143、双葉93。世帯中、世帯中に1人でも帰還の意向があれば帰還の意向ありに換算する。これ、集計のやり方おかしくないですか。帰還の意向を示すことが除染の条件。そうされていることで回答が誘導された影響もあると思います。
資料の⑥。
昨年9月の福島民報。大熊町の60代男性は、3択で聞かれてもどうしたらいいか分からない。別の60代男性は、帰還できるようにするための具体的な条件を複数提示してほしい。50代男性は、どこまで除染するのか分からない状況の中では判断が付かず答えられない。調査の在り方、批判されていますよ。
資料の⑦。
同じく帰還困難区域が設定された浪江町津島区長会長を務める末永さんのお言葉。希望する人だけを除染したら地域がまだらにされる、自宅以外は高線量なのに誰が戻るのか、俺の自宅が除染されたら無料で貸すから子供を連れて暮らしてみろ、そう言ったら、職員は一言も返答できなかったという。これらの声、当然ですよ。
将来にわたり居住を制限する、政府が決めて避難させた、極めて汚染レベルが高いから被曝を管理する、そう言ってきた地域ですよ。今になって、帰る人だけ家の周りちょこちょこっと除染する、そう言われている。帰還するかどうか聞く前に、日本の法令しっかり守って、全域を最低限放射線管理区域未満の汚染レベルに下げなければならない、これ当然じゃないですか。帰還の意思を国が問うのはその後ですよ。ここまで下がった、事故前はこうでした、どうなさいますか、これがないじゃないですか。
資料の④。
世界の核施設災害及び核実験被害地域で、一度住民避難を行った地域に再度住民を帰還させようという政策は失敗。あるいは、そもそも行われていません。
1986年、ウクライナ、チェルノブイリ原発事故。原発周辺30キロから約10万人強制移住。村や町など188の居住区が廃止。汚染と事故原発での不測の事態を警戒し、35年以上経過してなお居住禁止。1950年代、旧ソ連、ロシア・ウラル地方、マヤク生産合同事故。プルトニウムを扱う工事からの廃液放出と火災事故により1万人強制移住。23の村が閉鎖。50年以上経過しても再定住は行わず。1950年代、マーシャル諸島、核実験被害。ビキニ環礁住民167人、エニウェトク環礁の住民172人が強制移住。60年代末に再定住計画が策定されるが、汚染レベルが高く、七八年には再度強制移住命令。
政府は、事故は収束した、線量は下がったと言う。当然、事故直後より下がったんでしょう。都市部の平地では、一部集中的な除染の効果もあったんでしょう。でも、これってごく一部の環境改善にすぎませんよ。終わりの見えない生態系汚染の全体像に目向ける必要あるんじゃないですか。
生活圏の周りだけちょこちょこっと除染する。政府方針の批判には、山林と一体である地元の生活実態を訴える声が多い。岩渕委員からもありました。
資料の⑧。
浪江町の林業従事者。俺たちは林業で生きてきた、山を除染しないと生きていけない。悲痛な声を上げている。
山林の汚染状況を調査する専門家たちは、事故から約十年経過した時点でも問題を指摘。除染されない山林に放射性物質が蓄積、残り続ける。山林の汚染が食物連鎖を通じて山菜や川魚などに濃縮され、汚染が高止まり。居住地を除染しても、山林から流れ出した放射性物質で再度汚染されてしまう。
政府は、福島県の7割を占める森林、山林の環境を汚染してしまったことの重大さ、全く認識していませんね。数世代にわたる環境回復の取組が必要なんですよ。避難指示解除後も警戒態勢の中で生活が続いているのが現実。これ、先ほど農地の話出てきましたよ。これ、これまで解除されてきたところ、農業やるんだったら御勝手にという形でずっとこれ認めていますよね。
個人の営農者が圧倒的に多いんですよ。これによってどんな被害を被るかといったら、これ、企業として、組織として、何かしら法人で農業に取り組んでいたら、これ電離則で守られるはずでしょう、ちゃんと管理されるんだから。個人の営農は自己責任になるんですよ。
で、農地のことを事前にまだ調査すらしていなくて、この後、地元と話し合いますって。この後も自己責任の農地で、砂煙が舞い上がったりとかしながら、呼吸でこれ放射性物質とか取り組んで、内部被曝につながる。そんなことも分かっていながら、そこに対して何も、何かフォローを入れようとするような気配もないじゃないですか。もう実際に解除されたところでそれが普通に行われていますよ。そして、これから行われることも、これまでやってきたことに準じるわけでしょう。むちゃくちゃじゃないですか。
避難指示解除は、支援、補償の打切りとセットで行われてきた。原発事故後、政府は避難指示などが出た13市町村の住民を対象に医療費、保険料等の金額又は一部を免除してきた。17年4月までに避難指示解除された11市町村に関しては、解除後10年でこの減免措置を停止する方針が示された。ごめんなさいね、はっきり言ったら棄民政策なんですよ。ずっと続いているじゃないですか、2011年の事故から。それを思うとちょっと感情が高ぶって、申し訳ない。
戻ります。資料の⑨。
昨年、双葉郡の住民が方針撤回を求めて設立した、福島原発事故被害から健康と暮らしを守る会は次のように訴えている。原発事故で強いられた放射線被曝による健康へのリスクは生涯続く。また、いまだ生活再建途上にある被害者にとって、医療費等減免措置はまさに命綱。国策で進めた原発で重大事故を起こし、放射能汚染で故郷を奪い、なりわいを奪い、生活、避難生活を強いたのです。そして避難指示生活をはるかに超えた地域の多くの人々を被曝させた、その責任は国と東電にある。
その責任感じていますか。言葉だけにしか思えない。どうしてこんな当事者に、被害者に声上げさせるんですか。
帰還困難区域からの避難者に対しては今のところ医療費等減免措置は続いているが、今後打ち切られることが懸念される。
資料の⑩。
復興庁とやり取りしました。そのメールのやり取りです。
これ、何かといったら、避難指示が解除された区域については同様の考え方で、これまでと同様の考え方で医療費の減免の見直しを進める、医療費減免支援を打ち切る気満々の内容になっているんですよ。
10年、20年で終わりませんよ。どれだけのでかい事故が、とんでもないことが起こっているかって、あなたたち一番分かっていることじゃないですか。長期的に見てどうするべきかということをこの国会で決めてほしいなと。でも、その中身ないですよ、はっきり言っちゃえば。
医療費減免措置、当初の規模でのそれらの継続、更なる対象の拡大をしなきゃいけないんですよ。因果関係なしってなるから、お構いなしなんでしょう。やってくださいよ。どこまでの範囲の対象に医療費の減免措置を広げるか、どれぐらいの期間続けるべきか、2つの制度に立脚すべきということを提案させていただきます。
資料の⑪。
1つ目は、東海村JCO事故関連。周辺住民等の健康診断事業。この制度は、評価された被曝線量が1ミリシーベルトを超える者、健康診断を希望する者が対象となります。本人が望む限り事実上生涯にわたって受けられる健診。事故直後に基準を上回る被曝を余儀なくされたことを根拠に対象者を広く取るということがこれでできるじゃないですか。
そのためにはもう1つ、皆さんがつくったものですよ、資料の⑫。
原発事故子ども・被災者支援法、これに基づき設定された支援対象地域。避難指示区域外で福島県の浜通り及び中通りがその対象地域とされた。それ以外に広げようと思ったら追加していけるという立て付けになっているはずですよ。この支援対象地域全体を医療費減免の対象としていないのは、立法趣旨を無視した不作為です。最低限、この支援対象地域に一度でも指定された地域の住民及び事故時点での居住者は全て対象にする必要があると思います。
大臣、最後に、医療費減免措置の継続期間、これ対象者の生涯続けるということ、理にかなっていると思います。被災者のことを思われているとふだんからおっしゃっている大臣、これについてはやると約束していただきたいんです。いかがでしょう。
○委員長(古賀之士君) 申合せの時間が参りましたので、質疑をおまとめいただきたいと思いますが。
○国務大臣(渡辺博道君) 医療費減免の見直しについて、継続すべきだという御意見でございます。
この問題につきましては、昨年の4月から本措置の見直しを決定したところでありまして、関係自治体の御意見を踏まえ、急激な負担増にならないように、避難指示解除から10年という十分な経過措置をとるとともに、複数年掛けて段階的に見直すこととしているところであります。
また、本特例措置が終了した後も、所得の低い方に対しては、通常の保険料等の負担軽減措置が講じられることとなります。さらに、個々の事情に応じて、納付相談の実施やきめ細かな対応が行われるよう、厚生労働省と連携しながら周知に努めてまいりたいと思います。
○委員長(古賀之士君) おまとめください。
○山本太郎君 ありがとうございます。
余りちゃんとお答えいただいていないんです。一度でも指定された地域の住民及び事故時点での居住者は全て対象にする必要がある。医療費の減免措置の継続期間、これは生涯続けるということが、とんでもない事故を起こしたその加害者側である国と東電の役割なんですよ。
大臣、被災者を思う、被災地を思う、常日頃から言われているんですから、これ前に進めてくださいよ。是非お願いします。
ありがとうございます。
———————–
○山本太郎君 れいわ新選組、山本太郎です。
本法案に反対の立場で討論いたします。
帰還困難区域は、極めて汚染レベルが高いとして、強制的に住民を避難させた地域です。本法案は、この地域に十分な環境回復措置を行うことなく、小手先の環境整備だけで住民を戻してよいとするもの。被害を矮小化し、被害者が望んでもいない限られた選択肢を無理やり押し付け、後は自己責任とする、これまでの政府の原発事故被害対応の悪い部分を凝縮したような法案です。
人間の生活圏は、住居とその周辺の道路と集会所で完結するものではありません。福島第一原発事故により、最も直接かつ深刻な被害を受けた福島県。その面積の約7割は森林です。本来は、森林とつながった生活圏を一体として捉え、何世代にも及ぶような環境回復の取組が求められる事態です。
自宅以外高線量なのに誰が戻るのか、どこまで除染するのか分からない状況では判断が付かない、俺たちは林業で生きてきた、山を除染しないと生きていけない。傲慢な政府の姿勢に対する痛烈な怒りが、これら住民の声には込められています。本法案からにじみ出る、帰る気があるならごく一部のスポットを除染してあげる、政府の上から目線への怒りです。
これまで、避難指示区域の解除は、避難を余儀なくされてきた住民に対する支援や補償策の縮小、そして撤廃とセットで行われてきました。膨大な終わりのない山林汚染を残したまま、住民の求めるレベルまでの環境回復は行わず、それでも政府が避難指示解除に突き進むのは、被災地と呼ばれる面積を減らし、そして被害者を放置する口実が欲しいからにほかなりません。
避難指示が解除された地域の住民に対しては、医療費等減免措置が段階的に廃止されています。帰還困難区域内でも避難指示が解除された復興拠点の住民に対しては、今後、同様に支援が縮小、撤廃される可能性が非常に高い。原発事故で強いられた放射線被曝による健康へのリスクは生涯続きます。いまだ生活再建途上にある被害者にとって、医療費など減免措置はまさに命綱です。これは医療費減免措置継続を求めて双葉郡の住民たちが立ち上げた市民団体の要望に記された言葉。
政府は、この生涯続くリスクに目を向けず、住民の命綱を断ち切る政策を進めてきました。被害を見えにくくし、被害者を放置する政策の総仕上げが帰還困難区域を消すこと、その一里塚となる本法案には断固反対いたします。
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