国会活動
2017.3.9 予算委員会公聴会「経済・財政・社会保障」
2017年03月15日
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○山本太郎君 先生方、本当に大変勉強になりました。ありがとうございました。
自由党共同代表の山本太郎です。自由・社民の会派、希望の会を代表して聞かせていただきます。
まず、ざっくりしたところから聞かせていただきたいんですけれども、共通の質問とさせてください。順番にお聞かせください。
将来、日本の経済を上向かせるために、そして持続可能な国づくりをするために今手を打たなければならない分野というのは何だとお考えになりますか。必要なんだけど余り熱心には取り組まれていない分野を、その理由とともにお聞かせいただけると助かります。稲葉先生から順番に聞かせてください。
○公述人(稲葉光彦君) 今、これから日本の中でどんな分野が必要になっていくか、そしてまた一番大事な分野はどれなのかということでございますけれども、やはり私は、一番大事なのはやはり社会保障の充実ということだと思います。これから大変な、介護の問題だとか高齢者の、超高齢社会になってくるというようなことでございまして、そういう面で世界に類のない超高齢社会を迎えるというようなことでございますので、そういう面でやはりそういう対策、それにはやはり社会保障の充実ということが大事なことでないかと思います。
そしてまた、やはり保育分野、先ほどお話ししましたように教育の原理と、原点というようなことでございまして、幼児教育の、乳児教育の大切さというようなことで、これをやはりおろそかにしたら日本の国がどうなるかということはもうおのずから分かることではないかと思います。
そういう面で、社会保障のやはり分野の充実という、財政的なやはりいろいろ歯止めはあると思いますけれども、やはり社会保障が極めて大事な一番のポイントではないかと思います。そういう面で、社会保障の充実によって安心、安全な社会を生み出せるのではないかと思います。そういう面で、一番大事な分野は福祉関係ということでないかと思います。
○公述人(井手英策君) 私も今の稲葉公述人と基本的に同じ発想を持っておりますが、社会保障という言葉にこだわる必要はないというふうに思っております。それはどういうことかと申しますと、例えばお金をあげる、あるいはサービスをあげるということだけでは私たちの生活が本当の意味では守られないのではないのかという気持ちがするからです。
例えば、アルコール障害があって生活保護をもらっている人がいたとしたときに、その人に、生活保護であれ何であれ、現金を渡せばきっとお酒を飲んでしまうと思います。じゃ、果たして社会保障という形でその人にお金をあげればそれで済むのかと言われたら、私は済まないと思います。
したがって、例えば自殺をする人がいたときには、それは仕事が理由で死ぬのかあるいは借金が理由で死ぬのか家族関係が理由で死ぬのか、きっと様々な理由の中でその人はある困難に直面するんだと思います。そうだとするならば、単純にお金をあげる、サービスをあげるというところを超えて、その人がなぜそのような困難を抱えているのかということをきちんと寄り添いながら判断し、そしてその人たちがまた自立に向かって進んでいけるようなパスをつくれるような、これはいわゆるソーシャルワークという概念になりますが、そういう部分に少しずつシフトを移していくというような視点が大事ではないかというふうに思っております。
○公述人(萩原伸次郎君) 今の御両人の意見と重なるかもしれませんが、社会を持続的に発展させていくということは、先ほどでいいますと潜在成長というものに関わる。潜在成長を伸ばしていくということを考えれば、当然ながらそこには人が関わってくる。つまり、働く人が知的レベルは高く、生産性が高い。それから技術、これもやはり二十一世紀にふさわしい技術というものをやはりつくっていかなければならないということを考えますと、教育ですね、教育というのが非常に私は重要になるんだと思います。
そして、今日、私の時代はまだ大学の授業料が非常に安くて、いた時代でございますけれども、今日は大変、先ほどでいえば機会の均等がなされていない。勉強しようと思っても、お金がなくて大学に行けないというような時代になっているわけですね。それでは、やはりこの日本の将来の展望を語ることは僕はできないんじゃないだろうかと。
ですから、そういう意味でいいますと、そういう将来の日本の人、若い人、それに希望を持たせるようなそういう仕組み、特に教育という面で、まさに幼児教育から大学の高等教育まで国はきちんと面倒を見るシステムをつくっていく、そのことによって私たち全体が豊かになっていくということを考えれば、これはやはり大変重要な課題だと私は思っております。
○山本太郎君 ありがとうございました。
一番必要なものは何だという問いかけに対して、それぞれの先生からお答えをいただけました。稲葉先生は社会保障だと。この部分に関しては、大きく分ければ三人の先生方は共通している部分だと思いますけれども、稲葉先生は、その中でも幼児教育をもっと深めていく必要があると、大切にしてほしいというお話。そして、井手先生からは、社会保障に関しても個別具体的な寄り添いが必要だと。そして、萩原先生からは、教育にもっと力を割くべきではないかと、これ先行投資という意味でおっしゃっているんだと思います。
続いて、私から、もしお時間が、予定の質問、私の予定している質問が終わった後に時間が余った場合にここ一つずつ聞いていきたい部分もあるんですが、その前にちょっと、準備してきた聞きたかったことがあるので、是非これを聞かせてください。
社会保障の中でもセーフティーネット、その中でもこの国のもう本当に一番、何やろな、これしかないんじゃないかと言われるセーフティーネットについて、ちょっとお話をしたいと思います。
事実上唯一のセーフティーネットと言われているのが生活保護であると。受けるべき人がどれぐらい受けられているかということを示す捕捉率、これ恐らく二割から三割じゃないかというような状況であると。この国に生きる人々の権利でもあるはずの生活保護が、水際作戦であったり親族への照会などによって受給するまでのハードルも高く上げられた上に、生活保護を受けること自体が恥とする風潮も存在するようで、受給者の間では、自分が生きていていいのかと思い詰められて、自分で命を絶たれた方までいらっしゃいます。
この責任は誰にあるのかということなんですけど、私は政治にあると思っています。そして、この制度に対してもっと光を当てなかった、セーフティーネットという部分を、これ一つ、まあいろんなものがありますけれども、結局はこれに頼らざるを得ないというようなセーフティーネットしか構築してこれなかったという部分にあると思います。
セーフティーネット、言葉ではもう一言なんですけれども、この生活保護以外にも、例えばセーフティーネット、国のセーフティーネットをつくっていくと言うんだったら、どういうものを大切にしていくべきか、どうあるべきかというようなお話を聞かせていただけると助かります。
○委員長(山本一太君) 三人の方ですよね。
○山本太郎君 はい。
○委員長(山本一太君) 稲葉公述人。
○公述人(稲葉光彦君) 社会保障の中でセーフティーネットというようなことでございますけれども、やはり、まず生活保護の問題、これは本当に大事なセーフティーネット、憲法第二十五条で保障されている問題でありまして、そして、これは権利として認められたのは、本当になかなか成立しなかった問題でありますけれども、ようやく成立したというのは、私も法制史の中で、そういう面では、窮民救助法案というようなことで古来からの歴史を研究しておりまして、そういう面で、権利として生活保護を勝ち取るというのは本当に大変なことでありました。
そういう面で、権利として認めている生活保護でありますので、そういう面で、なかなか、今お話がありましたように、生活保護に対して国民の考え方がいまだに恥だとか、なかなか生活保護を受けることに対して非常に何かちゅうちょするというような点があります。
そういう面が、これが日本の何か根強いそういうような意識、そしてまた、第三者も生活保護を受けていることに対してのやはり壁というものもあると思います。そういう面で、これは国民の権利として認められている問題でありますので、そういう面で、やはり社会の考え方を変えていかなければいけないと絶えず思っております。
○公述人(井手英策君) 今の議論の前提としまして、困っている人を助けるということがまず大事だという発想があるように伺いました。そこは私はちょっと距離があります。
どういうことかといいますと、一つは、セーフティーネットをたくさんつくっていきましょうということがございます。それは一つの方向性です。私はこう考えます。世の中にたくさん落とし穴があって、そのたくさんある落とし穴に人々がはまって落ちていくときにネットがなければならないという議論ではなく、この穴をなくすべきだという議論、これが僕にとっては非常に重要な視点のように思えるわけです。
もし医療をあらゆる人々がきちんと受けれるようになれば、あるいは介護や教育や、あるいは住宅も含めて、様々なサービスを全ての人々が受け入れられるようになれば、この穴がそもそも減っていくわけです。そして、もし医療、介護、教育、住宅を人々に手厚く提供していけるようになれば、最後に必要な生活保護は生活扶助の部分だけになります。ここの部分はしっかりとしたネットを張るべきだ。最低保障ではない、私に言わせればディーセントミニマム、品位ある保障をやるべきである。
穴を塞ぎながら、もし万が一落ちたときには、しっかりと小さいけれども絶対に破れないネットを張るということが大事なのであって、私はその意味で、生活保護をむしろ最小化していけるような社会が最も良い社会ではないのかというふうに考えています。
○公述人(萩原伸次郎君) セーフティーネットというのは大変重要である、これは日常的に私どもが生活していく場合にどうしても必要になってくる医療、介護その他もそうでありますけれども。しかし、人間というのは、やはり自分が自律的に、誰に世話にならず、そして生きていきたいという気持ちも確かに持っているわけですね。ですから、そうした私たちの気持ちというものをいかに実現させていくかという社会ですよね。
ですから、先ほどの私の議論でいいますと、働いても二百万以下しか収入がないというような状況では、これはとても安全に生活するというわけにはいかないわけでありますから、そういう点でいいますと、個々人がやはり社会に関わって、その中から正当な報酬を得ることによって生きていけるという、そういう社会をこの公の、ここです、これはまさにそれを議論する場だと思うんですが、そういうことを政府それから議員の方たちが議論して、そしてそれをつくり上げていくということが非常に重要なことになっていくんじゃないかというふうに考えております。
○山本太郎君 ありがとうございます。
続いての質問、井手先生にお聞きしたいんですけれども、先ほども民進党の委員の方から御質問があったと思いますけれども、小田原市での生活保護問題、これ職員の問題行動がクローズアップされたと。これは職員の生活保護制度へのそもそもの理解の欠如などもあったでしょうけれども、私は職員の過重労働という部分にも関係していたんじゃないかなというふうに思うんですね。例えばほかの自治体なんかで聞くのには、相談乗る側が、もうこっちが生活保護を受けなきゃいけないぐらいなのに、生活保護を受ける人を受け付けているような状況も実際に生まれているということを聞いています。
小田原市の検討会で座長も井手先生はお務めになっているということをお聞きしました。是非、自治体からどのような要望が出ているのか、生活保護行政改善のための何かそういうような声を聞いていましたら、是非聞かせいただけませんか。
○公述人(井手英策君) 今議論が進行中でございますので、小田原市の方が、だから、その中身を何かぺらぺらしゃべっていいものかどうかは分かりませんが、現時点でオープンになっている情報を基礎に申し上げれば、一つはまず、保護のしおりという、生活保護をお考えの方がお役所に来られたときに、とにかくあのしおりを読む限りは、もう一体、生活保護の仕組みがいかなるものなのか何なのかさっぱり分からない。難しい言葉がだあっと並んでいるわけです。したがって、ちゃんとその人たちの権利である以上は、そうやって人を突っぱねようとするのではなく、こうすればちゃんと受けられますよと説明ができるようなしおりを作らなければならないと、これが今一番焦点になっている論点であります。
加えて重要なことは、単に生活保護受給者の権利を守るだけではなく、これは当然大切なことです、しかしプラスアルファ、まさに今、山本先生がおっしゃったような、現場のケースワーカーの皆さんや職員の皆さんがちゃんとした真っ当な状況の中でやるべき仕事をできているのかどうかについても光を当てなければならないと思っています。
例えば、ケースワーカーの人たちが声なき声を上げようと思ったときに、小田原市の場合、組合がございません。どのようにして彼らは今の苦情を訴えればいいのか。あるいは、十年前に職員が切り付けられるという事件がございましたが、そのときに全庁的に職員がみんな彼らを、つまりケースワーカーの人たちを支えよう、助けようとしたのか、どうもそうしていない雰囲気がある。
したがいまして、重要なポイントは、生活保護を必要とする人がちゃんと当然の権利としてそれを申請できる状況をつくり出すことと同時に、ケースワーカーの人たちがその組織の中で見下されたり差別されたりすることがないように、堂々と仕事をやっていけるような環境を整えることではないのかというふうに思っております。
○山本太郎君 ありがとうございます。
今、日本では、少子化対策がもう待ったなしという状況になっているということがあります。少子化対策って何が必要なのかということを挙げるんだったら、三つあると思うんですよね、よく言われることで。一つは教育だと、教育に本人とその家族の負担が掛からないようにすること。一つは所得であると、所得が少ない場合にはそこに補助していくというシステムがあればいいと。そしてもう一つ、住宅があると。この三つを国が率先して出生率を上げていくために補助していっているヨーロッパの国々では、これが劇的な、劇的なとは言いませんけれども、変化が見られてきているという情報があると思います。
一方、日本を見てみると、例えば社会的、社会住宅といいますか、公共住宅というものを全住宅で見てみると五・五%ぐらいしかないと。そのほとんどは、もう若い人たち、若年世帯が入れるような要件はほとんどないというような状況にされてしまっている。一方、先ほどお話ししたヨーロッパなどでは、全住宅に占める社会住宅的なものの割合は一八パーとか一七パーとか、桁が違う状況になっていると。
皆さんがお考えになる少子化対策というものの中で、この住宅の施策というものは重要なものなんでしょうか、やっていくべきだと思われますか。次は萩原先生から順番にお聞かせ願っていいですか。
○委員長(山本一太君) では、まず萩原公述人。
○公述人(萩原伸次郎君) 住宅政策に限ったということでございますが、確かに、私はこれが非常に重要な問題になっているというふうに思います。特に日本の場合には、住宅事情というのが昔からそういい状況ではございませんでした。そして、核家族化というのが進む中で、その住宅の需要というものが大変多くなってきている。その中で、結局、日本は民間の要するにディベロッパーですよね、それに任せるという形で、公の住宅政策というのが後手後手に回ってきているというのが大きな問題になっているんだというふうに思います。
したがって、私たちはやはり住宅に対する考え方というのを大きく変えていかないと。やはり民間の家を買えばいいんだという形で、あるいは公的住宅に住んでいる人は所得が少ないからそういうところに住んでいるんだというような、そういうような偏見ですね、いうようなものを言わば私たち自身がなくすことによって、住宅というものが、これは社会が言わばそれを供給するということなのだというような、しかもその住宅は非常に快適な、そういうものを、当然それを造っていくべきなのだという、私たちの意識改革といいますか、そういうものも恐らく必要になって住宅問題というのを解決していくということにつながってくるんではないだろうかと。
そういう点でいいますと、山本議員のおっしゃることは大変よく分かるわけでございまして、そういう点でいうと、ヨーロッパその他から比べて日本のまさに政策というのが、教育もそうですけれども、大変深刻な事態になって、そして、要するに子供もつくれないというような事態で少子化が生まれ、そして人口が減少していくという深刻な状況を招くという事態になって、それはやはりどうしてもそれを変えていくということが必要になってくるんだろうというふうに思います。
○委員長(山本一太君) 時間が来ておりますので、大変恐縮ですが、簡潔に御意見を賜れれば幸いでございます。
○公述人(井手英策君) 低所得層向けとして住宅を提供してしまうと、一種のレッテル貼りになってしまうと思います。そこに住んでいる人たちが貧しいということが分かってしまう。したがって、現物給付でやるのであれば、中間層まで含めて大胆にやらなければいけない。しかし、これは大転換ですので、当面は家賃補助をやっていくというような形で、誰がどこに住んでいると分かりにくいような形にしていくような工夫が必要かもしれません。
○公述人(稲葉光彦君) 本当に少子化の問題で、やっぱり住宅事情の問題が大きな問題だと思います。それをいかに改善していくかと、これがやはり少子化対策の一つの改善だと思います。
○山本太郎君 分かりました。
終わります。ありがとうございました。
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