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資料④ 朝日新聞(2018年3月23日)

○山本太郎君 自由党共同代表、山本太郎です。社民との会派、希望の会を代表し、質問いたします。

始める前に、憲法三十二条を読ませてください。「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」。個々人の権利や自由が侵害されたとき、究極的に救済し得るのは裁判所です。だからこそ、裁判で、何人も裁判を受ける権利を奪われないと規定している。しかし、この裁判を受ける権利さえも脅かすような恫喝まがいの被災者いじめを行っている企業が存在します。東京電力です。

資料の一、東電の三つの誓い、副社長、赤線部分、三つ目の赤線部分を読んでください。

○参考人(文挾誠一君) 東京電力ホールディングス副社長の文挾です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

それでは、お配りさせていただいております資料を読ませていただきます。三ポツでございますが、「和解仲介案の尊重」、「紛争審査会の下で和解仲介手続きを実施する機関である原子力損害賠償紛争解決センターから提示された和解仲介案を尊重するとともに、手続きの迅速化に引き続き取り組む」、以上でございます。

○山本太郎君 副社長さん、忙しいところ来ていただいたのに、早速読んでいただいてありがとうございます。

最後の和解仲介案の尊重というのは、これ、ADRから和解案が出たらそれを尊重するということを誓ったものですよね。

東電自ら作った三つの誓い、特に今読んでいただいた部分、東電は守っていますか、副社長、どうでしょうか。短めにお答えください。

○参考人(文挾誠一君) 御質問ありがとうございます。お答えさせていただきます。

訴訟とADRにおいて、訴訟の対象とされております損害の内容が同じ場合には、判決とADRの和解の内容が重複、矛盾、抵触する可能性があるというのが、今日、先生がお配りしたものの後ろのページのものに記載がされてございます。そのため、判決確定まではADRの和解案の全部又は一部の諾否につきましては留保させていただきたいと考えております。

該当する事案につきましては、和解案の諾否を留保する可能性のある旨の文書をADRセンターに提出するということと同時に、その請求者様に対しましてもお送りをしているという次第でございます。

以上でございます。

○山本太郎君 私がこれから説明することを先に先回りして説明して、そのことについて、申し訳ないけれどもそれは除外する的なことを今おっしゃったんですか。

東電が作った三つの誓い、東電、守っているのかと聞いたんですよ。守っていないじゃないですか。守っておりませんと答えるのが普通なんですよ。残念ながら守られておりません。

東電自らその誓いを破りに行っている実態をお伝えする前に、東電事故後の賠償の仕組みについてざっくり説明いたします。

資料の二。被害を受けたとされる人々が東電に賠償を求める方法は大きく分けて三つ。

一、東電への直接請求、賠償金を早く受け取ることは可能ですが、東電による判断基準からの支払で賠償額は最低レベル。二、原子力損害賠償紛争解決センター、いわゆるADRが中立的な和解案を作るという方法、東電側の賠償額に納得いかないなどの方々のために賠償金額を東電基準にプラスアルファできる可能性がありますけれども、強制力、拘束力はない。三、個別、集団による民事訴訟、こちらは司法ですので、一応公正中立で、強制力、拘束力もありますが、期間が長期化するなどにより経済的、心理的負担が大きいものですね。

では、先ほどの話に戻りたいと思います。憲法上保障された裁判を受ける権利さえも脅かすような恫喝まがいの被災者いじめを行っている東京電力についてお話です。

資料の三。訴訟の判決が確定するまではADRの和解案を留保するという旨が書かれたADR宛ての東電からの上申書若しくは連絡書という書面、資料の三、何枚か重なっていると思います。

原子力災害の賠償を求めて、国、東京電力を訴える原告の方々に対して、関連訴訟の内容と重複する可能性があるので、関連訴訟の判決が確定するまで和解案全部又は一部の諾否を原則留保するというのが東電の言い分。これまで東電は、裁判をやっている、原告であるといったことを理由にADRなどでの和解には応じないと態度を示したことはなかったといいます。今回、文書の中で、和解案への態度を留保する理由として、関連訴訟の内容を重複する可能性、こう挙げられています。先ほどもそう言われましたよね、副社長もね。

これ、分かりやすく翻訳しますね。ADRでの和解案の請求内容と訴訟での請求内容が重複する部分がある。かぶるんですよ、二重払いの可能性が出てくるんです。だから、結果出るまで留保にするんですという意味合いのことを言っているんですね。

しかし、これまで、こういった場合であっても東電はADRの和解案を受け入れ、支払、行ってきたという過去があるんですよ。訴訟において、弁済の抗弁、つまり、かぶっている部分は既に支払っていますから、裁判で賠償責任が認められたとしても既に支払った部分は損害額から控除してくださいよねという主張で対応することにしていたんですよね。

関連訴訟の内容を重複する可能性、これがあったとしても後で調整する方向で対応していたのに、一転、とにかく留保の方向にかじを切った。被災者支援の弁護士の方々は、昨年夏辺りからこのような傾向が強まり、顕著に表れていると言います。この東電の対応、かなり大問題です。

東電、このような関連訴訟の判決が確定するまで和解案全部の諾否を原則留保という書面、何人、何件に対して送ったんですか。

○参考人(文挾誠一君) お答えさせていただきます。

御質問の件数に関してでございますけれども、こちらの件数につきましては、今和解手続が非公開で手続が進められております。それと、被災者様、御請求者様に当たりますが、個別事案に関わることでございますので、この件数についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

以上でございます。

○山本太郎君 原告になるなら賠償はお預け、和解案は留保だ、東電のこのスタンスにより東電がどう得をするんでしょうか。裁判で地裁に提訴を行い最高裁で判決が確定するまでどのぐらいの時間が掛かるのかを知れば、東電の思惑が透けて見える。裁判は、地裁での一審が終わっても高裁、最高裁と続くので、判決が確定するまでは十年以上掛かることはざら。もっと時間が掛かるケースが公害問題では散見されます。

例えば水俣病関西訴訟は、提訴から最高裁での判決確定まで二十二年。例えば第一次厚木基地騒音訴訟では、提訴から最高裁での確定まで十六年、その後の差戻し控訴結審までは十九年。例えば西淀川大気汚染公害裁判では、一次提訴から国との和解まで二十年以上

今回の東電による和解案への留保は、裁判で決着が付くまでの向こう十年以上の期間にわたって賠償を果たすことを拒否するものですよね。東電にはその自覚があるんですか。お答えください。

○参考人(文挾誠一君) お答え申し上げます。

ただいま御質問いただいた件でございますけれども、あくまでも判決確定までの和解案の諾否につきましては留保させていただいているということでございますけれども、これは、あくまでも損害の対象とされる損害が同じであると考えられるものに限ってございます。

したがいまして、訴訟とADRで賠償の対象とされる損害が同じではないというものにつきましては、判断できるものにつきましては、通常どおりADR手続による紛争の解決を引き続き進めさせていただきたいというふうに考えている次第でございます。

以上でございます。

○山本太郎君 何人に対して、何件に対してこのような書類を送り付けたかも答えられない人たちが、ほかではちゃんとやっていますからこれは例外なんです風な答弁やめてもらえませんか。時間稼ぎは何のためということはもう透けて見えているという話、したじゃないですか。時間稼ぎはやめろというんですよ。

東電の現在の姿勢は、地裁から最高裁までの期間、とにかく裁判をやっている間は、ADRの和解案にも応じない、直接請求にも答えないというもの。これは事実上、裁判なんてやるなという原告へのメッセージにもなります。支払われるべきものが支払われない、賠償金が払われない状況が長く続くほど首が締まり困るのは被災者、被害者です。

東電のこのような工作には、二つの狙いがあると見られます。一、裁判の回避。原告を降りなければ賠償に応じない、経済的問題を人質にされた原告側が屈することになれば裁判回避できる。二、賠償金の値引き。原告が屈することなく最高裁まで争ったとしても、判決確定した結果、安い賠償額を出してもらえる可能性。

この、ただいま言った二について説明したいと思います。

資料の四。これまで原子力災害に対する集団訴訟での判決、全部で七つです。

昨年の三月、集団訴訟で最初に判決が出されたのが前橋での地裁、前橋地裁。そこで認められた金額が非常に少なかった。それで、東電としてはADRの和解仲介案に従うよりも裁判をやった方が支払う額が少なくなるというふうに考えて、東電は裁判の行方を見守るという方向に転換したんじゃないかという疑いを持っています。

裁判所での判決が賠償額を低く出してくれた場合、こつこつと賠償を続けるよりも結果安く上げられる、これが、最初に御紹介した資料の三の上申書、連絡書につながったのではないでしょうか。実際、この前橋の判決後にこれらが原告側に送られています。裁判の行方を見るという建前を利用し、実際は損害賠償のコストカットを実現しようとするものなんじゃないですか。

加えて、もう一つの疑惑があります。時間切れです。先ほど、判決までに長い年月が掛かった訴訟例のうち、例えば西淀川大気汚染公害裁判では、提訴後に死亡した原告患者は百名ほどいると言われ、首都圏建設アスベスト訴訟は原告約四百名のうち六十名ほどがお亡くなりになっている。既に原子力災害の訴訟でも、二〇一七年三月、前橋地裁での判決前に三人、二〇一七年九月、千葉地裁での判決前に六人が亡くなってきており、そのほかの裁判でも、地裁の判決を待たずに亡くなった方、出ているようです。

このような高齢の方、どんどんどんどんこの先、タイムリミット迫ってきているって言い方は失礼だけれども、実際時間切れということを狙っているんじゃないのかなと。東電、時間切れ狙っているんですか。

○参考人(文挾誠一君) お答えさせていただきます。

決してそういうことはございません。

以上でございます。

○山本太郎君 原告であることを理由に直接請求やADR和解案を受けないというのは、ちょっと質が違う異様さ。東電によるこの裁判の原告いじめ及び裁判を受ける権利の侵害について、これ本当に何とかしていただきたいんですよ。

ADRを所管する文科省、そして直接請求にお金を出している支援機構を所管している経産省、この事態を、まずここは、時間がもうないので、把握しているのか把握していないのか、この件に関して、それだけをお答えください。後ほどまたお話しいただきますので。

○国務大臣(林芳正君) 東京電力から、個別の案件におきまして、申立人が申し立てた和解仲介手続とその申立人が提起した損害賠償請求訴訟の内容が重複していることを理由として、当該訴訟の判決が確定するまでの間、和解案の諾否を留保する旨の意見を示す書面が送られていることは承知をしております。

○大臣政務官(平木大作君) 東京電力が、訴訟とADRとの間で賠償の対象とされる損害の内容が同じ場合、判決確定まではADRの和解案の諾否を留保し、賠償の対象とされる損害内容が異なる場合にはきちんと対応する旨の書面を請求者に送付している旨承知をしております。

○山本太郎君 これ、文科省さん、ADRというのは紛争を早期に解決するための制度なんだと。こんな長期戦を意図的に仕組んでくる加害企業に対して、何とか助言なりなんなりやる方法がないかということを考えていただきたいんですね。

そして、もちろん経産省にも、昨年五月に東電と共同で出した新々総合特別事業計画の中に、「和解仲介案の尊重」って部分には、「被害者の方との間に認識の齟齬がある場合でも被害者の方の立場を慮り、真摯に対応するとともに、手続の迅速化等に引き続き取り組む。」とあるんですね。少なくとも、この計画に沿った行いを東電に求めていただきたいんですよ。

加えて、やはり、復興大臣、加害者側が被害者側をこんな何度も踏みにじるみたいなことがあってはならないと思うんです、私。是非ともこれは、全ての閣僚が復興担当大臣だ、みんなが復興担当なんだということに鑑みて、この東電がやっているような、今までやってきたことを急にやらなくなったというのはあり得ないですから、それを何とか改めていただきたいんです。是非お力を貸していただきたい。

復興大臣、そして文科大臣、そして政務官共にお言葉をいただけませんか。

○委員長(江島潔君) 時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

○国務大臣(吉野正芳君) 経済産業省共々、東京電力に対して指導を徹底してまいりたい、このように考えています。

○国務大臣(林芳正君) 東電が被害者に寄り添って誠意ある対応を行うことは重要であると考えておりまして、文科省としては、東京電力に対して和解仲介案の尊重の遵守などの要請を、三月二十日付けでございますが、行ったところでございます。

○大臣政務官(平木大作君) 東京電力に対しましては、三つの誓いに基づき迅速かつ適切な賠償を実施していく方針、東京電力が明らかにしているわけでありますので、そこの趣旨にしっかりのっとった形で丁寧な対応をしていくように、これからも指導してまいりたいと思います。

○山本太郎君 終わります。




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