国会活動
2018.5.31 内閣委員会「地方分権の名をかたり中央集権を進める話」
2018年06月11日
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○山本太郎君
ありがとうございます。自由党共同代表、山本太郎です。社民との会派、希望の会を代表し、お聞きいたします。いわゆる第八次地方分権一括法案について。
安倍政権でスタートした地方創生。「地方創生とこれまでも存在した地方分権、これどう違うんですか?」というふうに聞いたら、資料の①とともに説明をしてくださいました。
地方創生の重要な基盤の一つを構成するのが地方分権改革、地方創生という大きな目的のために、地方分権改革、特区制度、そのほかの地方創生に関する政府の取組を総動員して総合的に取り組んでいるとのことなんですけど、ということなのであれば、地方創生が地方分権を邪魔するというようなことはあり得ないですよね? いかがでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君)
端的にお答えしますと、阻害要因となっているとは認識をしておりません。
○山本太郎君
ありがとうございます。地方創生という安倍政権肝煎りの地方を活性化させる政策の一環として、2014年、まち・ひと・しごと創生法が制定。その中で、各市町村に対して地方版総合戦略というものを作成するよう努力義務を課した。これは、地域活性化と人口減少克服のため、政府が自治体に2015年度中の策定を求めていたもので、今後は自治体が取り組む地方再生計画や長期的な人口目標などについて定めるというんですが、地方版総合戦略を既に策定しているのは、全ての都道府県、そして全1741のうち1737の自治体、つまり策定済みが99・8%。地方創生関連の交付金は、この地方版総合戦略を作成しないともらえない仕組みになっているということでいいですよね?
○国務大臣(梶山弘志君)
御指摘のとおりであります。
○山本太郎君
これ、戦略の策定が交付金の条件になる。つまり、策定戦略は事実上の強制にしているという話ですよね。交付金を餌に戦略策定させているんですから、策定している自治体の割合が高いのは当然になると。地方自治体がこの戦略策定に掛かる日数というのは平均でどれぐらいになりますかね?
○国務大臣(梶山弘志君)
平均の日数はこちらでは特に調査はしておりませんけれども、抽出して調査をしたものがありますので、ちょっと説明をさせていただきます。例えば、都道府県でいえば北海道、北海道が12か月検討期間が掛かったということであります。あと、鹿児島県が15か月。市町村でいうと、石川県加賀市が6か月、滋賀県の栗東市が12か月、京都府の京丹後市が4か月、こういったところで抽出して調べているところであります。
○山本太郎君
質問しないと出てこないこともあるもんですね、こういう基本的な情報でも。まあ1年ぐらい、1年以上掛かっているというところも多数あるというような状況だと思います。
自治体からは、国から日々求められる調査、照会事項や、法律で半ば義務化されている計画の策定に手間が掛かってしようがない、事務処理に人手を割かなきゃならないので困るという不満の声が多数上がっています。これは、戦略の策定とは少し別物と推察するんですけれども。
資料の②の1。2014年5月の内閣府地方分権有識者会議で、新潟県の聖籠町町長の意見発表の内容です。読みます。
国から町村に依頼される事務で、様々な調査、報告がありまして、その対応だけでも非常に厳しい状態です。職員の定員管理をし、行政改革で職員の削減等を行っている中で、こういう多様な形での調査、報告が、私どもの方にフィードバックされ、それをまた我々が生かしたり、国や県の政策に生かせるものであれば分かるのですが、ただ取りっ放しであって、国の機関の統計資料にされるだけのものも多々あるわけであります。我々は職員が限られておりますので、事務量からしますと非常に厳しい状況があります。大変僣越なのですが、ここ、有識者会議のことですね、ここに来る前に我が町の実態ということで、各課に照会して、勝手ながら作ってみました。詳細を検証して作成したものではありませんので、あくまでも参考に添付させていただきましたので、後ほど御覧になっていただき、またこういう実態があるのだなと知っていただければと思います。各省庁も様々な考えがあって行っていますし、県からの照会も含みますが、私どもとしては疑問を持つものも結構あるという実態を御理解いただきたいと思います。
で、聖籠町が示したのが資料の②の2。平成25年度に国から調査、照会があった事項、計画策定が420件、これに対応するのに必要な時間を町独自で算出、聖籠町がですね、全部こなすには、一人でやった場合、656日掛かる、あるいは、一日でやった場合、656人必要という作業量のものだった。
これだけのマンパワーを割いて国に情報提供しても、その後のフィードバックは得られないという状態であると。いかに自治体が国から要求される調査、照会事項などにより日常業務に支障を来しているのかがうかがえる。
ほかにも、2017年3月に、地方創生は北海道に何をもたらしたか? という北海道大学の調査、資料の③。
この中で、国・地方関係の経年的劣化という項目に、国から各自治体へのコントロールは概して強化されていっていると感じますか? という設問に対する回答結果、実に65・4%、102の北海道内の自治体が強化されているというようなお話なんですね。
大臣、この町長のお訴え、そしてこの大学の調査などをこういうふうに見てみたところで、地方創生が結果的に地方分権の邪魔をしている、そうも言える、言えないかなと私思うんですけど、そう言えるんじゃないかな? と思うんですけど、大臣、いかがお考えですか?
○国務大臣(梶山弘志君)
個別の市町村、個別の都道府県もそうですし、団体の、6団体という形でもありますけれども、こういった調査も、足し算だけじゃなくてやはり引き算もしっかりしていこうということで、必要のないものはだんだんしないような形でいろんな議論を重ねているところであります。
また、さらに、このコントロールしているかしていないかというのは、また意識もあると思いますし、財源の部分でもあるんでしょうけれども、私どもは自主的に判断ができるような地方分権というものを目指して取り組んでいきたいと思っております。
○山本太郎君
北海道では多くの自治体が国からコントロール強まっていると非常に感じている状況が見られたと思います。
今回は第八次の改革、2014年の第五次分権改革から、改革内容について、自治体に手を挙げてもらいましょうと、あるいは具体的な分権メニュー提案してねというような提案募集方式が開始された。
資料の④。この方式に変わった第五次から昨年の第七次に至るまで、各年度の提案の総数、その実現の達成度、どのくらい提案されて、うちどれだけ実現したか。
表の一番右端の実現・対応の割合を見れば、いかにも順調に推移しているねというふうに言えそうなんですけれども、まだ完全に実現していない対応と実現を一緒にまとめてパーセンテージを出すというのが非常に怪しい。一〇〇%実現したものだけの割合出してもらえますかと頼んでも、出せない、これで終わるんですね。ますます怪しい。出せないわけないじゃないですか、実現したものだけ数えりゃいいんだからって。正確なデータを基に国会審議も検証もやるつもりはないんでしょうかということなんですけれども。
資料の⑤、国会図書館イシュー・ブリーフ。これまで地方自治体に権限の移譲が行われたものの主な項目なんですけれども、まあこれ見ると実に細かい内容ばかり。
先ほど榛葉先生の方からもお話がありました、非常に細かいものが多いじゃないかというお話だったと思いますけれども、地方分権というよりも事務作業を単に上から下に移譲しているだけじゃないかと。ただでさえいっぱいいっぱいの自治体のお仕事が更に厳しい状態に置かれるような、分権ならぬ事務作業の移動になっていないかという話なんですけれども。
地方分権というテーマの中でも非常に大切なテーマとして、財源の移譲、この部分があると思います。数人の先生方からもさきに御指摘があったと思います。実際はかなり厳しい議論に陥るものというのが過去の数々のお話を見ていけば分かるんですけれども、前に進めるということは大変必要なことだと私は思うんです。議論が必要。しかし、議論は低調のようです。
平成29年の地方分権有識者会議の開催は4回行われたらしいんですね。その中で税源移譲について軽くでも触れられたのは、第29回、28回、29回の会議のみ。合計4回の会議、その議事録全体の文字数をカウントすると14万2千533字。そのうち、税源移譲に関する何らかの議論の文字数をカウントすると678字しかない。つまり、税源移譲が話し合われた割合というのは全体の0・47%程度だったと議事録からは推察がされます。
つまり、地方分権改革の最大の岩盤規制であろうテーマさえも、有識者の方々に議論いただいていないという状態なんですね。これ、ドリルがどうしたとかって、総理いつも言っていませんでしたっけ。そのドリルどこへ行ったんだろうね?って。この地方分権有識者会議こそが一番コアな議論が活発に行われていなきゃいけない場所なんでしょうけれども、ほとんど触れられていない。
地方財源に関しては大きな格差がありますから、そこを補填する、足りないところには補填する、これ当然国の役割ですよね。地方の疲弊を救えるのは政府だと、それが責務だと私は思うんですけれども、しかし地方の自由なアイデアとして、議論を深めるきっかけとして、受け付ける体制くらいあってもいいんじゃないかなと私は思うわけです。税源の移譲が許される提案募集方式は、今後やる予定はありますか。
○国務大臣(梶山弘志君)
必ず地方分権の場合はその税源も一緒にという、税源、財源も一緒にという議論が出てくるわけでありますけれども、ここにおいては権限の移譲、規制緩和に当たらないと。予算事業に関してとか、その税源に関しては当たらないということで、ここでは議論されておりません。
ただ、テーマとしては誰もが認識しているわけでありまして、様々な場で議論をしているということでありますし、これを議論だけで終わらせるつもりはないと思っております。
○山本太郎君
まあ地方の、何でしょうね、新しい税金という部分では恐らく総務省とかが法定外新税的なものとかをやっていたりとかというので、最近はそういう提案もだんだん少なくなってきているという部分もあるとは思うんですけれども、一応、内閣府は全ての省庁に横串を刺すということなんですから、地方分権、地方創生というところでそういうテーマを新たにまた手を挙げてもらうという方式をせっかく導入しているわけだから、わざわざ自分たちからこのテーマはやらないよということを、何かこうシャッターを下ろすようなことは余りしていただきたくないなとは思うんですけれども。
提案は受け付けてやるよと。けれども、提案できるのは国が認めたジャンルだけねという一方的なメニューから手を挙げさせるスタンスで地方創生って名のるのは、これちょっと、共謀罪をテロ等準備罪と呼んだりとか、賭博開張法案をIR法案と呼ぶのと同じ世界じゃないかなと思うんですね。要は、名前と中身、マッチしていませんねという話なんですけどね。いわゆる誇大広告みたいな話になっていないかなって、地方創生というものが。
加えて、地方創生といいながら、地方自治体の通常業務に支障を来すほどの情報、作業を国が地方に求めておいて、その後フィードバックもしない、これ非常にまずいと思うんですけれども、何かしら情報を得たんだったら、それをまた地方が使えるような形で返してあげるというのは、これ地方創生にも、ある意味地方分権というところにも非常につながっていく問題じゃないかなと思うんですけど、こういうことを大臣の方から各省庁の方にお知らせして、何とか得た情報はまたフィードバックするようにしてあげてよというようなことは言えないものなんですかね?
○国務大臣(梶山弘志君)
地方自治体に依頼をして集めている資料等についてはしっかり公表できるようにということで基本原則はやっておりますし、また、できていない部分に関しましても、御指摘があれば、しっかりそれができるように、情報開示できるようにしてまいりたいと思います。
○山本太郎君
大臣はそういうお気持ちでやっていただけるというのは分かったんですけれども、実際は、でも、もうさんざん人手が掛かって国に対して求められたものを出したとしても、それがまた何かの形でフィードバックされているという感覚はないというのが地方の実際のところだというふうに思うんですね。地方分権といいながら、実は中央集権がますます強まっていっているんじゃないかなというふうに言えるんじゃないかと。
これは専門家の方々の間でも警鐘が鳴らされています。資料の⑥、朝日新聞、東大、金井利之教授の記事です。
政府は、ビジネスで使われる重要業績評価指標、KPIという数値目標を含めた取組を自治体に提出させ、政府が善しあしを取捨選択して支援、つまり、政府のおめがねにかなったところだけ助けるのです。
ちょっと略しますね。一極集中と人口減少の中で疲弊に苦しむ全国の地方自治体同士が手を組んで声を上げるべきです。国をそんたくして頑張らないと支援を受けられない仕組みをやめさせて、全国どこでも生活できるシステムをつくらせる。全国一律に現金、現物給付や移動、輸送など一定の行政サービスを確保するナショナルミニマムが必要です。結果として、地方でも暮らしが成り立つことにつながります。共食い競争では、人々の暮らしは支えられませんと。
これ、ある意味地方分権という部分もあるんでしょうけど、そこにまだ到達できないぐらいの地盤沈下といいますか、もう人口も減って、財源もなくてという、それで、もうこの国が今目指しているところを見ていても、とてもじゃないけれども地方に力が、活力が戻るような状況は見られないんだから、全国一斉にそういう、例えばどこに行っても住めるというようなナショナルミニマムを確保した方がいいんじゃないか、それこそが地方創生につながるんじゃないかという御指摘だと思うんですね、この先生の。これを聞かれて、いかがお考えになりますか、大臣は?
○国務大臣(梶山弘志君)
地方創生というのは、人口に着目して、人口を維持していく、ある程度のところで維持していく、それで持続可能な地域にするためにはどうしたらいいかということでやっております。その予算執行に関しまして、今、KPIに言及がありましたけれども、ある程度の指標を立てないと、国においても都道府県においても市町村においても、予算の執行の目安というものはつくるべきだと思っております。
○山本太郎君
もう時間が来たようなので締めたいと思うんですけれども、その目標を定めるというのは非常に必要なんですけれども、そうすると、もう、今まで見てきたKPIというのがとてもじゃないけど到達できないよねということが次々に分かってきたから、また再検証されてということが続けられていると思うんですね。
とにかく、地方創生、本当に地方分権を行うんだったら、もう一度見詰め直して、細かな移譲ではなく、大きく全国的にナショナルミニマムというものを引き上げていって、どこにいても住めるという状況を確保していくことが大切じゃないかなというふうに思います。終わります。
【反対討論】
○山本太郎君
山本太郎です。私は、第八次地方分権一括法案、地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案に反対の立場から討論を行います。
本法案は、提案募集方式に基づき、都道府県から指定都市などへの事務、権限の移譲や地方公共団体に対する義務付け、枠付けの見直しに関する実に15本の法律を一括して改正するものです。それぞれの改正の中には必要と思えるようなものもありますが、中には毒リンゴ的なものが含まれていると言わざるを得ません。
就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の改正内容は、地方分権とは全く関係ない施策です。これは、政府が推し進める定員基準の緩和による待機児童の削減策であり、狭い面積により多くの子供を詰め込むことを可能にするものとなっており、安全面、教育面の最低ラインを守れないという就学前の子供に関する教育、保育の現場からの声を無視した政策を地方に押し付けるものではないでしょうか。
マイナンバー制度による情報連携などもプライバシー侵害以外の何物でもないことは、本人確認不必要などの部分を見れば明らか。国が一か所に情報を集約することを地方分権の名の下に進めているだけではないでしょうか。
提案募集方式については、その募集要項において国、地方の財源配分や税制改正など五項目をあらかじめ提案することを禁じており、地方創生、分権といいながら、国への御機嫌伺い以外は許されないばかりか、常日頃から、地方自治体の通常業務に支障を来すような国からの照会事項などで負担を増やし、地方自治の現場を疲弊させるようなことを続けており、真の分権改革を行う気概も見えないのが現実です。
地方創生がスタートしてから、一層、地方分権ではなく、国が地方を支配する中央集権国家を目指す方向性が見られるとの大学の調査や地方分権を専門にする大学教授の指摘が示すように、国と地方がより濃い主従関係になっているという現状はゆゆしきものです。
本当に地方創生、分権というならば、まずは財源が圧迫されている自治体の地方債を軽減、チャラにすることなど、金融緩和と財政出動によって救済を行えるはずです。デフレのときにしかできない大胆な金融財政政策で地方間の格差を是正することも可能であるはずなのにやらない。地域の自主性、自立性、それどころじゃないのに、どうやって何を高めればいいんですかといった地方自治体を本気で救うところから始めるべきではないでしょうか。
私は、地方分権の名をかたり中央集権を進める雰囲気だけ地方分権法案には反対と申し上げ、討論といたします。
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