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0619ー内閣参考人WEB

○山本太郎君
ありがとうございます。自由党共同代表、山本太郎です。
先生方、本当に分かりやすいお話、勉強になりました。ありがとうございます。

 

まず、渡邊(頼純)先生にお聞きしたいんですけれども、アメリカによる追加関税措置のWTOルール、この適合性についてお聞きしたいと思います。
アメリカは、3月、鉄鋼に25パー、アルミニウムに10パーの追加関税を課す輸入制限措置を発動させたと。韓国は米韓FTAの再交渉で大幅な譲歩をのむことを引換えに鉄鋼の輸入制限の対象から除外されて、オーストラリア、アルゼンチン、ブラジルも輸入増加への対策強化で大筋合意に達したとして適用除外された。他方、NAFTA加盟国であるカナダだったりとかメキシコとかEUに対しては、一定期間を区切って猶予されていたけれども、それぞれNAFTA再交渉及びEUとの関税交渉が不調に終わったため、これらの国と地域にも追加関税措置が発動されたということだったんですけれども。

先生の御見解として、今回のアメリカの追加関税措置というのはWTOルールに適合したものであるとお考えになりますか。アメリカは安全保障を理由として措置をとっているという説明だったと思うんですけど、このような主張は国際的に認められるものなんでしょうか。

 

○参考人(渡邊頼純君)
山本先生、どうも御質問ありがとうございます。
まず、非常に率直に申し上げて、このアメリカの鉄鋼、アルミに対する追加関税、これはWTOルールに照らしますと、全くの違法行為であります。ですから、これはもう全く弁明の余地がない、WTO違反であると思います。

 

ただ、アメリカはこれを、1962年の貿易拡大法、ちょうどケネディ・ラウンドをやるために、アメリカの議会がケネディあるいはジョンソン政権に交渉マンデートを与えるために作ったのがこの1962年の通商拡大法ですが、その232条を使ってこの正当性を主張しております。

 

232条というのは、御存じのように、国家の安全保障に対する脅威ということが理由でございます。それを使って25%とそれから10%という追加関税を掛けたというのは、これはおよそこれまで通商の歴史で余り例のない異常な措置をとったというふうに理解していいんだろうと思います。

 

ただ、一つの問題は、この国家安全保障に対する脅威という概念、これの判断は、その脅威を感じている国、これが判断をするんだということがこれまでの数少ない事例の中で積み上げられてきた前例となっております。ですから、そういう意味ではアメリカは非常にうまく考えてその国家安全保障例外というのを使ったというふうに理解しております。

 

○山本太郎君
なるほど、WTOルール的には違反ではないかと、でも、ほかの安全保障という部分で自分たちをプロテクトしているということだったと思います。

 

これはもう明らかにアメリカの手法というのは、違反しようとも一方的な措置をもう発動させて、それを除外してほしかったら俺たちの言うことを聞けよというようなやり方だと。非常に私としてはちょっと許せないといいますか、これ、何とか求めていくという形よりも、他国がやっているようにWTOに提訴するだとか、例えば報復関税だったりとか、こっちにも牛肉だったりとか豚肉だったり強い味方がいますから、そういう意味で、対抗措置として、それが実際になされるかなされないかは別にして、そういったメッセージの投げ方、それちょっとやり過ぎだよというようなやり取りは、独立した国家としては普通にみんなそれを、意思表明というものをするものだと思うんですけれども、先生としては取り得る対策としてベストなものは何だと思われますか。

 

○参考人(渡邊頼純君)
私は、良くもあしくもガット・WTO屋でございます。つまり、貿易紛争の問題というのは多国間のルールに従ってルールに基づいた解決、いわゆるルールベースソリューションというものを求めていくべきだと考えておりますので、基本はWTOへの提訴ということであって、制裁とか報復とかというようなことも、このWTOの紛争解決手続にのっとった制裁ないしは報復ということですね。

 

つまりは、WTOでオーソライズされた、WTOでこれはやってよろしいということを認められた制裁をアメリカに対してする。そのためにも、WTOにきちっと提訴をするということが重要だろうと考えております。

 

○山本太郎君
ありがとうございます。
そうですよね。そういう協定といいますか枠組みがあるんだから、その中のルールにのっとって言うべきことは言っていくという姿勢というのは非常に真っ当だと思います。日本もそういう姿勢を示すべきだと私は思います。

 

この元々のTPPの中にもなんですけれども、ISDSというものを非常に懸念される方々が非常に多いということがあるんですけれども、一方では、世界ではISDSではない紛争解決の方法というものもでき上がってきています。

 

なぜ日本がここまでISDSに対してこだわりを持っているのかということを、渡邊先生、御存じであれば教えていただけますか。

 

○参考人(渡邊頼純君)
御質問ありがとうございます。
実は、このISDSというのは、私自身がこの交渉を担当させていただきました日本とメキシコとのEPAもそうなんですが、日本がこれまで行ってきた二国間のEPAのほぼ全てにISDSが入っております。

 

これは、産業界にいろいろヒアリングとかしますと、是非それを入れてほしいと、むしろ産業界からリクエストがあって、それは要するに、最初投資をしていくときに、投資をしてほしい相手の、日本のEPAの対象国は途上国が当初多かったものですから、そういう途上国は投資をしてほしいから、いろいろ投資のいい条件を言ってくるわけですね。

 

ところが、実際に投資をした一年、二年後には当初の約束と違うことを言ってきたりすると。そういうことが結構あるので、投資家対国家の紛争処理というものを、実際に使うか使わないかは横に置いておいても、ある種の安全弁として、セーフティーネットとして入れておいてほしいということが産業界から強くありました。ですから、投資についてのISDS、つまり投資家対国家の紛争処理ですね、これを入れるということが基本線としてあったわけです。

 

入っていないのはどういう国との二国間のEPAかといいますと、一つはフィリピン、もう一つはオーストラリアでございます。フィリピンは、フィリピンの憲法の中に、外国人がフィリピン政府を訴えることができないという何か条項が入っているという説明でございました。だから、フィリピンはできない。それから、オーストラリアは当時ギラード政権でして、ギラード政権はISDSに、フィリップ・モリスというたばこの関係の紛争があったものですから、これはギラード政権は当時はノーと言いました。

 

ですから、日本がやってきたEPA、十五のうち、今申し上げたフィリピンとオーストラリアはISDSが入っていないということなんですね。日・ASEANの包括的経済連携を除きますと、ほかの二国間のEPAには入っているという状態でございます。

 

ですから、TPPにおいても同じような形で、つまり安全弁、日本からの投資家、日本から行っている投資家の保護ということを考えて、このISDSというものを日本政府としては強く押し出したということでございます。

 

○山本太郎君
ありがとうございます。
確かに、今まで結んできた二国間の協定であったりとか貿易協定だったりとか投資協定という部分にはISDS入っているものがあったけれども、その多くは途上国が多くて、どちらかというと、日本側が投資をするから、逆に言うと日本側を守るというようなISDSの使われ方だったんですけれども、TPP、この先、現在の加盟国以上の国もよければ手を挙げてくださいというような中で、逆に日本側に投資をされるということになると、日本もその訴えられる当事国になり得る話だという意味で、これまでのISDSとは大きく形が変わっていく、解釈が変わっていかなきゃならないんだろうなというふうには思うんですけれども。

 

その紛争解決に当たる例えば別の方法、ヨーロッパでいえばICSですか、というようなものも出てきました。もう既に、ベトナムとの交渉であったりとかカナダとの交渉でこのICSというものを入れていこうよというような話になっているとは思うんですけれども、特に日欧の約束の中でも、ここがクリアできなかったから投資という部分、投資の章という部分が結べなかったということもあったと思うんですよね。

 

ある意味、もう今の世界の流れとして、ちょっとISDS危険だよね、新しい枠組みでICSというものはどうなんだろうというような考え方になってきているとは思うんですが、短めに、ICSへの評価といいますか、これは渡邊先生と磯田先生、それぞれにいただいてもよろしいでしょうか。

 

○参考人(渡邊頼純君)
御質問ありがとうございます。
このEUが提唱してきているいわゆる国際投資法廷といいましょうか、これは、それはそれでメリットがいろいろあると思います。それで、日本としては、これから、一方でISDS、一方でICS、これを見ながらそのそれぞれの良さを検討していく、欠点も検討していくということで、政策的には選択の可能性があるんだろうと思います。

 

大事なことは、投資の紛争も、力に任せた紛争解決ではなくて、ルールに従って解決するということがポイントということだと思うんですね。ただ、そのICSみたいなもの、いわゆる常設裁判所みたいにしてつくると、それに対するコストとか、あるいはそこでの判事をどうするかとかといったような具体的な問題が幾つか出てくるわけですね。そういう問題をEUとも、今後は投資協定の中でそれを見ていく必要があると思いますので、そういう中でICSについての理解、あるいは制度構築というものが進んでいくのではないかと考えております。
以上です。

 

○参考人(磯田宏君)
御質問ありがとうございます。
これは、まさに参考人渡邊先生の御専門中の御専門の一環かと思いますが、私にも御質問ということなので、お答えさせていただきます。
結論的に言うと、一定の前進ないしは改善の方向性であるというふうに見ておりますし、そういう期待を持っておりますが、まだ評価はするには早いと、結論だけ先に言うとそういうことです。

 

どういう点で前進なり改善の期待を持つかということについては、山本先生も御案内のように、裁判官といいますか、従来のISDSでいうところの仲裁人に当たる裁判官なり判事というものを、一種の、EUならEU、それから相手国、そして第三国から三の倍数でリストを出しておいて、言わばプールしておいて、案件が持ち上がるごとにそこからある種偏りがない形で、どういう方法なのか正確にまだ私はつまびらかにできておりませんけれども、抽出して、そしてその法廷を組むということ。そのことを通じて、かつ、それらの裁判官になる法律家たちは、いずれの国家との関係性もあってはならないとか、一旦指名されたら利害関係が及ぶような投資家等、投資家や多国籍企業等との顧問関係的なものは一切絶たなければいけないとか、あるいは独自に定める行動規範に従うことを義務付けるとか、そういうことをうたっていて、そういう意味では、独立性だとか公平性だとか公共の利益に対する配慮だとかいったような、先生御指摘のようなものを目指しているという、ある種の目標値、目標として掲げている一種の方向性としては、今のISDSと比べれば改善の期待を持てるところがあると。

 

ただし、私の場合もそうですが、ISDSの評価をする場合の最も重要な根拠は、実際にどういう裁定を出してきたかと、それが当事国やその国民や地域住民にどういうものをもたらす、そういう裁定を出してきたかということに基づいて評価をするというのが一番重要なポイントになりますので、その点でまだ実績が基本的にないわけですので、評価はまだ留保せざるを得ないということでございます。

 

○山本太郎君
ありがとうございます。
そういう世界の枠組みというか、協定だったりいろんな決め事というのは、すべからく不完全だと渡邊先生もおっしゃいました。それは、足りない部分があったら足していったりとかということも必要なんだというお話だと思うんですね。

 

TPPは、生きた協定とよく言われていました。だからこそ、数々の小委員会による追加的の協議メカニズムというものがビルトインされているのかなというふうには思うんですが、ここを恐らく話し合われることというのは、適用範囲の拡大、要は自由な貿易というものを進めていくんだから、それが中心になっていくのかなと思うんですけど、その自由度ということを考えた場合に、適用外とされていたものが、元々は適用外とされていたものが、話合いの末に合意形成されていくならば、適用外が適用されていくというような見直しということも先々されていく可能性はあると思われますか、渡邊先生。

 

○委員長(柘植芳文君)
時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

 

○参考人(渡邊頼純君)
分かりました。
簡潔に申し上げますが、適用範囲の外の問題を中に入れていくときには、これ当然、いわゆる修正交渉、修正のための交渉というのをやらなければならないんだろうと思います。ですから、そういう意味では、新しい要素というものを協定の中に入れ込んでいくということになれば、これは新しい交渉が必要になると思います。

 

他方では、例えば私が担当していたメキシコとの経済連携協定の場合など、例えばメキシコにおける治安の悪化なんという問題があったわけです。そういう問題は、必ずしも協定の範囲ではないんですが、ビジネス環境整備という章がございまして、そのビジネス環境整備というチャプターの中で、日本から問題提起してメキシコ国内における治安の改善ということを言って、それを先生御指摘の小委員会の中で議論したことはあります。これは、ですから、協定の中ではありませんけれども、ビジネス環境整備というチャプターの中で、国内の治安の改善という問題意識を日本の側からインプットして議論していただいたということは、そういうことはあります。
以上です。

 

○山本太郎君
終わります。




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