国会活動
2018.12.4 文教科学委員会「被害者より電力会社」
2018年12月03日
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○山本太郎君
自由党共同代表山本太郎です。社民との会派、希望の会を代表し、原子力損害賠償法改正案、原子力発電所などで事故が起きた場合の損害賠償について、誰がどれだけの責任を負うのか、その資金をどう確保するかを決める、いわゆる原賠法についてお聞きいたします。
法律上定められた本法の見直しの期限はいつまででしょうか。
○政府参考人(佐伯浩治君)
現行の原子力損害の賠償に関する法律第20条において、原子力損害賠償補償契約及び政府の援助につきまして、平成31年12月31日までに開始した原子炉の運転等に係る原子力損害について適用することとされております。
○山本太郎君
済みません、要は、期限までにはまだ一年あるということですよね、1年以上あるということですよね。それにもかかわらず、先日の参考人質疑と本日の審議3時間コース、少数会派への質問時間は15分、たったこれだけの審議で終わらそうとしている。これほどの短時間、スピード審議で終わらせるなんてあり得ませんよ。
現在、東電原発事故が起こり、この法律にのっとって損害の賠償などが行われていますが、現実に見合った法律ではないため、加害者は肥え太り、被害者への救済は十分に行われない現実を生み出してしまっています。後ほど修正案提出いたしますが、短い時間で議論も深めないまま実際と見合わない法の延長を行うなど、立法府の自殺であると申し上げて、本題に入ります。
原賠法第6条では、何かあったときのためにお金を積んでおかないと原発は運転させないというのを損害賠償措置と定義、その額を賠償措置額と呼んでいます。賠償措置額は発電所ごとに1200億円、1200億円をそのままお金で供託してもいいけど、東電事故前はそのような事業者はいませんでした。事業者は、民間の保険と政府補償契約という政府が胴元の保険みたいなものにそれぞれ掛金を支払い、何かあった際には民間、政府それぞれから1200億円を上限としてお金を支払ってもらえる仕組みで担保します。
これまでの原子力損害において民間から保険金が支払われたのは、JCO東海村の事故の際に10億円程度のみ、東電原発事故で民間の保険が支払った額はゼロとのこと。東電事故では民間の保険からの支払がゼロ、理由を教えてください。
○政府参考人(佐伯浩治君)
損害賠償補償につきましては、原賠法及び補償契約法に基づき、一般的な損害については民間責任保険、地震や津波といった民間保険仕様では引き受けられない自然災害等による損害については政府補償契約で措置することとされております。
したがいまして、東電福島原発事故につきましては、地震、津波による損害として政府補償契約から支払が行われております。
○山本太郎君
民間の保険はヒューマンエラーについてしかお金が出ないよという話だと思うんですね。
確かにそうなんですよね。おかしいなと思うんですよ、これ。だって、大きな地震ありましたよ、津波もありました。でも、その一方でヒューマンエラーもありましたよね。
例えば、資料①一の②、国会事故調の報告書。
東電新福島変電所から福島第一原発にかけての送配電設備が損傷、全ての送電が停止。これは、福島新変電所の液状化や盛土の崩落による夜の森線27番鉄塔の倒壊などが原因。耐震への備えが甘かったという話じゃないですか。
さらに、東北電力の送電網から受電する66キロボルト東電原子力線が予備送電線として用意されていたが、一号機金属閉鎖配電盤に接続するケーブルの不具合のため、同送電線から受電することができず、結局、外部電源喪失、ステーション・ブラックアウトしてしまった。
ほかにも、津波が来たときに、非常用ディーゼル発電機や冷却用海水ポンプ、配電系統設備などが水没して機能不全に。津波対策、甘かったんじゃないですか。
資料の①一の③、①一の④、同じく国会事故調報告書。
現場の運転上の問題としても、東電が過酷な事故に対する十分な準備、知識、訓練などを実施しておらず、組織的な問題があり、監視・監督機能が崩壊していたことが根源的原因と結論付け、今回の事故は自然災害ではなく明らかに人災であると国会事故調にも言われています。
ヒューマンエラー連発、事故調いわく人災、でも民間保険は支払ゼロ。これ、済みません、振ってなかったんですけど、簡単にお答えいただきたいんですね。東電原発事故は本法案の中にある異常に巨大な天災地変という扱いですか、そうであるかそうでないかを教えてください。
○政府参考人(佐伯浩治君)
今回の事故につきましては、原賠法上の免責規定は適用されなかったと存じ上げています。
○山本太郎君
ということは、異常に巨大な天災地変ではないということですね。いかがでしょう、そうですよね。
○政府参考人(佐伯浩治君)
はい。
○山本太郎君
原賠法の中では、異常に巨大な天災地変ではなかった、つまり想定内だったという判断ができたということですよね。東電原発事故は、想定内とされていなければならなかった天災と人災による最悪の過酷事故であったことは原賠法の扱い見れば明らかです。東電原発事故でさえもヒューマンエラーはなかったと保険会社が免責されるんだったら、それは保険と呼べるものじゃないですよ。
保険会社にもおいしい思いをさせるためのインセンティブ、電気料金で回収し続けてきた既得権益のやり口の一つじゃないですか。この訳の分からない民間の保険の上限1200億円を賠償措置額の上限と事実上固定化していること自体おかしくないですか。
これまで引上げがなされた賠償措置額、引上げの理由は。
○政府参考人(佐伯浩治君)
お答え申し上げます。賠償措置額につきましては、昭和36年から21年にかけて5度の引上げが行われてまいりました。過去の改正におきましては、賠償措置額の国際水準を勘案しつつ、損害賠償措置の中核を成す原子力損害賠償責任保険に関する国内外の保険市場の引受能力の範囲内でできる限り高額を定めるとの考え方を基本として、これまで賠償措置額の引上げが行われてきたものと承知しております。
平成21年の改正においては、改正パリ条約が7億ユーロへの賠償措置額の引上げを定めたこと及び我が国の民間の責任保険の引受能力を勘案し、賠償措置額を600億円から1200億円に引き上げたところでございます。
○山本太郎君
保険市場の引受能力、この範囲内でできる限り高額なものを定めてきたという話だと思います。
保険では1200億円が限界なんですよ、だから賠償措置額1200億円になりました、これおかしくないですかという話なんですよ。賠償措置の金額を決めるにおいて、保険が保険がって、保険だけの話になること自体おかしくないですか。
保険がその程度しか出せないなら、事業者に供託金を積ませる。直近の事故の経験から得た実際額に合わせた供託金を事業者に積ませる。保険がっていう方法以外で担保させる。どうしてそういうことをやらないんですか。
○委員長(上野通子君)
柴山大臣。
○山本太郎君
済みません、聞いていません、聞いていません。ありがとうございます。だって、もう聞いたって一緒だもん。保険の引受能力の上限ということ以外はないんだから。全然、手を挙げても答えはそこにはございません。
じゃ、一般論でお答えいただきたいと思います、大臣に。附帯決議というものがありますけれども、文科省においてはこの附帯決議は重要なものでしょうか、それとも非常に軽いものなんでしょうか。通告していませんよ。
○国務大臣(柴山昌彦君)
当然のことながら、附帯決議は最高機関である国会の意思の表れとして重く受け止めさせていただきます。
○山本太郎君
ありがとうございます。じゃ、もう当たり前のことしか聞かないんですけれども、本法案を改正するに当たって、この附帯決議というものに対して配慮はなされて、その末の法案提出ということでいいですよね。大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(柴山昌彦君)
当然のことながら、過去の法案における附帯決議をしっかりと重く受け止めた上で法案を提出させていただいております。
○山本太郎君
ありがとうございます。
資料の②、2011年改正の際、衆参で決議された附帯決議では共に、おおむねの損害賠償額などを見つつ、改めて検討することとされていますね。
資料の③、東京電力ホームページ内、賠償金のお支払状況、東電は被害者に対して2018年十月末現在で約8・6兆円の支払をしている。
資料の④、こちらも東電ホームページから、新々総合特別事業計画作成時点で、可能な範囲において合理性を持って確実に見込まれる賠償見積額として東電は今年の4月時点で10兆4000億円の賠償見積額を公表。
附帯決議には、おおむねの損害賠償額を見つつ、改めて検討することとありますが、改めて検討した結果、掛かる費用がべらぼうに高いと、電力会社の都合のいいように賠償措置額は1200億円のまま10年延長に着地したのがこの法案なんじゃないですか。
事実上、附帯決議などは無視、電力会社の負担を減らすための現実を見ない法改正と言っていいと思います。先ほどの附帯決議を考え、現実を鑑みれば、今回の見直しで、まず東電が合理性を持って確実に見込まれる賠償見積額としている10・4兆円を最低限賠償措置額とすることが求められると思います。
本法案では、あくまで賠償の主体は事業者、でも責任を負わせる必要があるのは事業者だけでしょうか。東電原発では原子力格納容器の設計の段階で不備があったとも言われています。
資料の⑤の①、福島第一原発の1から5号機で使われているマークⅠ型原子炉の原設計をしたGE、ゼネラル・エレクトリック元エンジニア、デール・ブライデンボー氏は、マークⅠは、地震や津波などの大きな災害によって冷却機能を喪失すると、格納容器に想定された以上の負荷が掛かり、破裂する可能性がある、そのことが明らかになったのだ、つまり私たちの間で語られているデザインスペースの事故、つまり設計ミスから事故が起こるかもしれないということがはっきりしたのであると語っています。普通にこんな商品売ったらアウトでしょって。リコールですよ、回収ですよ、普通。
資料の⑥の①。1968年から77年まで日立製作所の関連会社バブコック日立に勤務、福島第一原発4号機の圧力容器などの設計に関わり、国会事故調の委員を務めた田中三彦さん。
マークⅠが欠陥を抱えているとの米国での指摘は当時から知られていました、格納容器全体の容積が小さいため、炉心部を冷却できなくなって、圧力容器内の蒸気が格納容器に抜けると格納容器がすぐに蒸気でぱんぱんになってしまう、最悪の場合は格納容器が破裂してしまう心配がありましたと説明。
欠陥商品によって事故が過酷化した、その可能性があるならば、その賠償についてメーカーなども賠償責任を負うというのは当たり前の話ですよ。
しかし、事業者以外のステークホルダーにも責任を負わせるのは無理だと主張するものの根拠の一つが条約です。平成26年11月国会承認、翌年4月発効、CSC条約は原子力損害に関する国際的な賠償制度の構築などがうたわれていますが、この条約が足かせになるのが事業者以外への求償の部分。資料の⑦。
上がCSC条約の附属書10条、下が原賠法の5条2項。条約の条文を要約すれば、メーカーへの求償は、必要な事業者は事前にどうぞ、御自由に特約を結んでくださいというスタンス。やりたきゃやれ、邪魔はしないと。
国内法よりも上位にある条約がこのような形なので、国内法である原賠法も、求償権に関し書面による特約をすることを妨げないとあります。何より、賠償について、最終的には国がお尻を拭いてくれるんだから、事業者がわざわざメーカーを巻き込むような特約、事前に結ぶはずもありませんよ。
未曽有の原発事故を経験した、莫大な被害とその賠償が発生することが分かった今、メーカーなどステークホルダーに対する求償、法律上で担保するべきじゃないですか。自国の被害者への満足な賠償ができていない現実を鑑みれば、被害者救済の足かせになる条約からの離脱も致し方ないんじゃないですか。
少し先走った話になってしまいましたが、条約云々の前に、メーカーなどに対する責任についての議論、もっと必要と考えます。今回、21回開かれた専門部会の議事録見ましたけれども、この課題について話し合われたのは第6回においてほんの少しだけ。どう読んでも初めから改善しようとする気持ちが全くない議論なんですよ。
先ほどの参議院の附帯決議、平成23年8月のものの中にもちゃんと書かれています。東京電力株式会社の経営者の責任及び株主そのほかの利害関係者の負担の在り方を早期に検討することという趣旨ですよ。事実上、また附帯決議、これ無視されたまま今回も改正されようとしているんですね。これ、おかしくないですかって。
大臣、メーカーなどの責任についての検討を、これ以上議論必要ないと思われますか。それとも、議論は進めるべきだ、これから深めていくべきだとお考えになりますか、どちらでしょうか。
○委員長(上野通子君)
簡潔にお答えください。
○国務大臣(柴山昌彦君)
はい。メーカー等の責任については、もう御案内のとおり、原子力事業者に対する責任集中の原則から、製造物責任法の規定は適用しないということでこれを排除することとしております。
現時点においては、原子力損害賠償制度専門部会の報告書において、こうした現行の規定を維持することが妥当であるとされておりまして、また、今、山本議員から御紹介をいただいたとおり、私的な協定が結ばれるわけはないというふうに御指摘でしたけれども、少なくともそういう道筋は取られているということもございますので、文部科学省といたしましては、取りあえずは現状を維持することが妥当であると考えております。
○委員長(上野通子君)
お時間ですので、まとめてください。
○山本太郎君
はい。現状維持は結構なんですけれども、これほど大きな被害者を生み、そしてその方々が本当に切り捨てられているような状況の中で本法案を改正するということに関しては、もっと常日頃からの議論を深める必要があると。大臣には、是非このメーカーの問題に関しても、そのADRの問題に関しても、中間指針の問題に関しても議論が進むような旗振りをお約束していただけますか。最後にお願いします。いかがでしょう。
○国務大臣(柴山昌彦君)
文科省としてしっかりと検討していきたいと考えております。
○山本太郎君
終わります。
【修正案趣旨説明】
○山本太郎君
ただいま議題となっております原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案に対し、希望の会(自由・社民)を代表いたしまして、修正の動議を提出いたします。
その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。これより、その趣旨について御説明いたします。
平成23年に発生した福島第一原発事故によって、広範な地域に甚大な原子力損害が生じました。被害者への救済は滞り、原子力事業を延命させるためだけの法案となってしまっている現状を改善しなくてはなりません。国民から信頼される原子力損害賠償制度を構築するため、本修正案を提出するものであります。
修正の要旨は、次のとおりであります。
第1に、法律の目的から、原子力事業の健全な発達に係る文言を削ることとしております。
福島第一原発事故という未曽有の被害をもたらしてもなお、収束、廃炉以外の原子力産業を保護していこうとする合理性はもはやなく、この一文があるために、原子力を保護するために被害者保護をないがしろにしているという事例が起きています。よって削除します。
第2に、異常に巨大な天災地変により生じた原子力損害については原子力事業者の免責を認めないものとしております。
世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ稼働させるというのであれば、異常に巨大な天災地変の際に原子力事業者の免責は認めません。津波、地震、火山の噴火にも対応できるという無敵の原発規制、奇跡を具現化できたのであれば、免責する必要など全くありません。
第3に、賠償措置額を10兆4000億円に引き上げることとしております。
残念ながら、1200億円以上の賠償措置額では受けられないという民間保険の感覚はまともです。これは、市場原理では成り立たない事業との宣言と同じ。
一方で、民間保険の上限をそのまま賠償措置額の上限として定めるのはお門違いです。そのような額では焼け石に水であり、十分な賠償を被害者にできるわけもないことは、皆様よくよく御存じのお話。
史上最悪の核惨事を経験しておきながら、上限を上げれば民間保険の引受手がないから賠償措置額は据置きという話は成り立ちません。民間保険の引受手がないなら、事業者には供託金を積ませるというのが当たり前です。最低でも、今現在、東電自身が、新々・総合特別事業計画作成時点で可能な範囲において合理性を持って確実に見込まれる賠償見積額として公表する10兆4000億円は準備させることとします。
第4に、原子力損害賠償紛争審査会が定める指針について、少なくとも毎年1回検討を行い、必要があると認めるときはこれを変更しなければならないこととし、指針の策定及び検討を行うに当たっては、被害者及びその関係者の意見を聴かなければならないこととしております。
現行の被害者救済手続において、東電事故における被害者に対する賠償は、原子力損害賠償紛争審査会が策定する指針に沿って東京電力が独自に賠償基準を作り、それに基づいて行われています。
しかし、実際の損害賠償は、自然的・社会的基盤が失われるふるさと喪失損害や放射性物質汚染による精神的被害等が含まれていないなど、被害の実態にそぐわないものになっており、極めて不十分。これらのことから、損害賠償をめぐって被害者と加害者である東京電力との間で紛争が頻繁に起きており、東京電力はADRで提示される和解案を再三にわたって拒否、そのようなケースが増加しています。これらは、ひとえに賠償指針の策定、見直しにおいて被害者の現状が全く考慮されていないということに尽きます。少なくとも毎年1回、被害を被った当事者を交えて指針の内容について検討を行い、必要があると認めるときはこれを変更するようにするべきであります。
第5に、政府は、少なくとも3年ごとに、福島第一原発事故により生じた原子力損害の額を踏まえ、賠償措置額の更なる引上げについて検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとしております。
今後、東電による福島第一原発事故による被害者への賠償額はまだまだ拡大する余地があります。よって、少なくとも3年に1回、若しくはそれより多い頻度でその時点での賠償額を考慮し、それ以上の賠償措置額の再設定を行うものとします。
第6に、政府は、速やかに、福島第一原発事故に係る原子力損害の賠償の実施状況等を踏まえ、第16条の規定による国の援助を受ける原子力事業者の株主その他の利害関係者の負担の在り方、その他の原子力損害賠償制度の在り方について抜本的な見直しを含め検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとしております。
福島第一原発事故において、多くの人々が故郷や家、財産などを失うような被害を被り、今でも苦しみの中にいます。これらの人々には、政府の借金や電力料金として国民が負担することにより、辛うじて被害者救済が進められている状態です。一事業者に責任を負えるレベルの事故ではなく、最終的には国民負担となることは避けられないとしても、まずは、事業者が全てを出し切ることはもちろん、原子力事業者に金を貸し、その利息でさんざんもうけてきた銀行や株主への責任をどう設定し、どう賠償に結び付けるかを具体的に示さなければ、国民負担の理解など得られようもありません。その課題に対して本格的議論を始めることとします。
第7に、政府は速やかに、原子力事故が生じた場合における国の責任の在り方を明確にする観点から、国の責任において行う被害者の救済に係る制度などについて検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとしております。原賠法ではお金の賠償に係ることだけを取り扱っていますが、発生する責任や救済すべき事柄はお金のことだけでなく、生活再建や健康不安、健康被害、除染など多岐にわたります。こういったことから、別建てで総合的な救済立法が必要と考えます。
また、今後起こり得る事故を考えれば、原賠法は事業者と被害者の間のお金の話だけにとどまらせるべきではありません。さらに、加害者が一方的に線引きした避難区域や賠償の基準により、そこには含まれず、流浪の民として生活を強いられる避難者も存在しますが、現在、なきものとして扱われています。このような人々についても国で積極的に救済を目指すことが必要であります。
第8に、政府は、第6及び第7の検討を行うに当たっては、福島第一原発事故の被害者及びその関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとしております。この法律は被害者の救済のためのものです。全てにおいて被害者の声を反映させることは当然であります。
以上が修正案の趣旨であります。何とぞ、委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
【反対討論】
○山本太郎君
自由党共同代表、山本太郎です。社民との会派、希望の会を代表し、原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律案原案に反対の討論を行います。
東電原発事故が起こり、この法律にのっとって損害の賠償などが行われていますが、全くの不十分、現実に見合った法律ではないため、加害者は肥え、太り、被害者への救済は十分に行われない現実を生み出してしまっています。
今回の改正は、これらの問題を是正し、加害者の御都合、一方的線引きにより切り捨てられる人々、不十分な救済に苦しむ人々を的確に救い、今後の不測の事態に備えるための法改正であるべきでした。しかし、今回も、これまでと同じように電力会社を守り、そのほかの利害関係者に悪影響が及ばないよう、国が肩代わり、消費者と納税者に負担させる仕組みを維持することだけが最大の目標となり果てている法案です。
本改正案の問題は、賠償措置額が1200億円に据え置かれている点。民間保険の1200億円が上限という部分を利用した措置額の決定方法は悪質です。実際に過酷事故が起これば、そのようなはした金で間に合う話ではありません。資金援助するための交付国債枠を9兆円から13・5兆円に拡大、東電は今年の4月時点で10十兆4000億円の賠償見積額を公表。にもかかわらず賠償措置額を1200億円に据え置くなど、いまだ神話の世界を生きているんでしょうか。一刻も早くおとぎの国から出てきて現実を見詰め直すことをお勧めいたします。
次に、今なお苦しみ続ける被害者をないがしろにしている件。賠償指針と被害者が苦しむ現状との乖離、加害者意識欠如の東電による一方的なADR拒否、東電の和解案拒否により和解手続が打切りとなった件数は1800件を超え、和解案を拒否し続けられ、浪江町だけでも、その間、今年4月5日までに申立て住民のうち864人がお亡くなりに。今回の改正では、こういった被害者の立場に立ち、問題を改善するものにはなっていません。
被害者の保護を図るという考え方、どこに消えたんでしょうか。被害者切捨てはもはやスタンダード、その部分を是正、反映させない法改正ならば、ほぼ現状維持の法改正に対してもそれにふさわしい修正を加えてはどうでしょうか。例えば、第1条の被害者の保護を図るを削除して、原子力の健全な発達に資するのみを残されてはいかがでしょうか。事実に見合った法改正を与党や賛成会派で行わなければ筋が通らないんではないでしょうか。
原子力製造メーカーの免責、当事者であるステークホルダーの責任の在り方、また、国の責任の在り方についてもほとんど議論されていません。たかが一企業で背負えるレベルの話ではない、世界に類を見ない現在進行形の核惨事が東電原発事故。その賠償や収束費用について今後多くの国民負担を免れないのは当然のこと。しかし、そこに行き着くまで最大の加害者である事業者が全てを出し切り、これまで原子力産業における甘い汁を吸い続けてきた者たちも出し切れるものを出し切ってからというのが大前提。
この法改正に本来盛り込まれるべき事項は、検討も議論もほぼされないまま、法の期限まで残り1年もある中、早々と本日、大した議論の時間も担保されないまま、この後、採決だそうです。
原子力事業をいかに生き長らえさせるかに集中した法改正、この原案に反対と申し上げ、終わります。
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