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2018.7.24 東京入管局「入管収容所へ視察時に行われた内容」
2018年08月22日
7月23日東日本入国管理センター、7月24日東京入管局に視察に行きました。
その際に行われた「収容所における問題点に対しての改善要求」とそれに対する入管の対応を、
一緒に参加してくれた山村淳平医師と被収容者支援者の方々が文章化してくれましたので、
掲載いたします。
7月23日東日本入国管理センターの内容は→ こちら
※牛久の東入国管理センターの、
・午前中はシャワーが水しか出ない問題
・夜22時(もしくは23時)を超えると収容部屋のエアコンが切られる問題
に関しましては、改善要求が受け入れられ後日改善致しました。
全文PDFは → 東京入管対話-180724
東京入国管理局での対話
2018年7月30日
文責 山村淳平
はじめに
2018年7月24日(火)、山本太郎参議院議員が、前日の東日本入国管理センターの視察にひきつづき、東京入国管理局を訪問した。その際、山本太郎議員によって、東京入国管理局と支援団体との話し合いの場がうけられた。
話し合いの11日前(7月13日)、山本太郎議員を介して、あらかじめ文書で支援団体の意見および見解、そして質問を法務省におくった。当日の話し合いは、午前12時00分ごろからはじめられ、12時30分に終了した。30分という時間制限があったため、質問11項目のうち8項目しか応答できず、しかも不十分であった。
そのときの話し合い内容を文章化したのが、この報告書である。まず項目ごとに、内容を整理した。さいしょは支援団体からのコメント(意見と見解)を記載した。つぎに、支援団体からの質問をQとし、それをうけた形で福山局長が回答した。その後、入管と支援団体のメンバー、そして山本太郎議員との対話がつづいた。
なお、のこりの回答は、のちに文書でおくられることになっている。当日の出席者は以下のとおりである。
● 国会議員
参議院議員 山本 太郎 秘書 後藤 一輝
● 東京入国管理局
局長 福山 宏
次長 石井陽一 藤田小織
法務省入国管理局 警備指導官 宮尾 芳彰 ほか10名
● 支援団体および関係者
外国人収容所を改善する会 松本 浩美 加藤丈太郎 伊志嶺 廣
山村 淳平(港町診療所医師)
カトリック東京国際センター 大迫 こずえ
作家 雨宮処凜
はじめに
2. 不服申出、意見箱、入国者収容所等視察委員会むけの提案箱のちがい
東日本入国管理センターのシャワー室におけるビデオカメラ設置について
支援団体からのコメント
まず、以下の写真をしめす。毎年6月になると、品川駅構内に東京入管の横断幕がはりだしてあった。その横断幕には、「ルールを守って国際化」という標語がかかげてある。この標語が、今回の申し入れのキーワードとなる。
ルールブックは、収容所で一日をすごすための案内であり、規則をまもること以外にも、被収容者のしる権利などをしめすうえで、重要な文書である。それによって、入管職員と被収容者の相互理解がふかまる。標語のように、まさに「ルールを守る」ことが必要となる。
ところが、ほとんどの被収容者はルールブックの存在をしらない。しかも、入国者収容所等視察委員会の存在や弁護士会の無料相談のお知らせは、被収容者のあいだで周知されていない。
Q 外国人収容所を改善する会による前回の要望書(2017年12月20日付)において、ルールブックの改定作業を示唆した。その後、どのようにすすんでいるのか。それとも、まったく検討されていないのか。
●福山局長
ルールブックとは「収容所敷地内での案内書」を指すとおもうが、これについては必要に応じて随時改訂をおこなっている。
Q かりにおこなっているとすれば、ルールブックは言語別の冊子となっているのか。被収容者の国籍は多様化して(図1)、標語のとおり「国際化」するには、言語別の対応をしなければならないとおもうが、どうなのか。
図1 国籍別被収容者数-東京入管(その年のある日の時点)
●福山局長
多言語で対応している。現在は17か国8言語だが、あらたに2言語追加する予定なので、10言語になる。
●山村
ルールブックを入手した。1つの冊子にまとめて、日本語、英語、中国語とかかれている。非常によみづらい。これを各国語の言語別に、たとえば日本語の冊子、英語の冊子、中国語の冊子にと、わけたらよいだろう。
●福山局長
そこは判断がつきかねる。1ヶ国あたりの分量がおおくなければ、一緒にしてもよいとおもう。
●山村
よむ側とすれば、よみづらい。この冊子(ルールブック)とは別に、診療申し入れの情報公開で手にいれた。ここでも日・英・中でかかれている。
被収容者申出書(診療)- 2018年6月に入手
問題点の1つは、被収容者の症状ではなく、高血圧や心臓病と病気の名前がかかれてあることである。診療の申し入れをするとき、本来なら症状をかかなければいけない。被収容者(患者)が自分の病気をしっているわけではない。それにもかかわらず、最初から病気の名前がかかれてある。医療機関で、このような問診票はありえない。
2つ目は、病名の英語での記載に誤字がある。英訳もまちがっている。たとえば、胃炎である。こんな英語の表現はしない。この英語の後に、間もおかずにスペイン語がかいてあるので、何が何だかわからない。英訳がきちんとなされていないうえに、スペイン語がつづき、つぎにタイ語がかかれていた。そして、ハングルもある。
これをみていくと、案内書のほうも英訳が正しくなされているのか非常にあやしい。とにかく、この英訳では問題ある。翻訳について、ネイティブの人にチェックはしてもらっているのか?
●福山局長
翻訳は業者に依頼している。ネイティブのチェックをうけているかどうかは、翻訳業者側の問題である。我々はそこまで確認していない。英訳の誤りについて、明らかな誤りといえるものは訂正すべきだが、一般的に日本語を外国語に訳すのは非常にむつかしい。たとえば、学術書では「これは翻訳の間違い」など、学者の間で論争があるくらい。それをかんがえると、ある程度の基準を満たせばよしとするしかないのではないか。
●山村
しかし、このレベルの英訳で2年後にオリンピックを開催するのはどうかしら?
●職員
その診療申し入れ書はいつのものか? ふるいものは変更したので、問題の冊子はつかわれていない。
●山村
それならば、また情報公開で手に入れる。
支援団体からのコメント
イラン人被収容者が保護房にいれられ、制圧され、打撲をおった。そこで、日弁連や東京弁護士会などの人権救済委員会に報告することを、わたしたちは助言した。彼は、不服申出、意見箱、入国者収容所等視察委員会への提案箱についてしらなかったのである。
Q 外国人収容所を改善する会による前回の要望書(2017年12月20日付)でのべているように、不服申出、意見箱、入国者収容所等視察委員会への提案箱の区別が理解できるように、わかりやすい説明はなされているのか。
●福山局長
収容所の中には意見箱と提案箱をおいている。その内容、投函方法を説明した案内を、6か国14言語に翻訳してある。それぞれの箱には「意見箱」「提案箱」とかいたうえで、「意見箱」は肌色、「提案箱」は青色と色分けしている。みれば、すぐにわかるようにしている。
不服申し立てについては、総務課にある「被収容者不服申出事務局」の職員に不服申出書を手わたすことになっている。そこでは、特別の案内はしていない。
Q 保護房にいれる目的は、なにか? 制圧するためなのか?
●福山局長
「保護房」という言葉だが、これは矯正局でつかわれている言葉であり、ここでは使用しない。被収容者処遇規則18条「隔離」には、「自損行為等行った被収容者は他の被収容者から隔離して単独室へ収容すること」とかいてある。
その中でもさらに「自損行為等を行った被収容者については、身体を~」とある。頭を冷やす、沈静化を図る必要があるので、保護室へ収容することがある。
保護室に入って不安が治まればよいが、あばれる人もいる。そこで、本人のケガをふせぐために制圧する。入国管理局では、本人に罰をあたえるために保護室にいれたり、制圧したりすることはしていない。
●山村
不服申出、提案箱、意見箱について、説明書きがない。日本語、英語、中国語でもない。文書としてしめされていない。それぞれどんなちがいがあるのか、わからない。各国語で説明して文書にしたほうがよい。
3つの意見を申し出る方法があると、被収容者は混乱する。それぞれの違いについて、わかりやすい表にまとめて、各国語で表記して、近くにおいておく。そうすれば、彼らの理解もすすむだろう。
質問で、保護房ではなくて、保護室と単独室とのことだが、そのちがいは?
●福山局長
単独室は普通の居室だが、1人用。保護室は安全のために、壁などやわらかい材質でできている部屋である。突起物などもない。
●山村
保護室や単独室にいれるのは、本人のケガをふせぐためといわれた。
わたしたちは先ほど、イラン人男性と面会した。単独室と保護室で制圧と暴行をうけたという訴えをきいた。彼からすれば、ケガをさせられた。制圧によってケガをした被収容者が、ある程度の人数でみられる。
最近では大阪入管で被収容者が骨折させられた 。東京入管が東京の十条にあったころは、イラン人が制圧によって亡くなっている。入管施設内ではないが、2010年成田空港でガーナ人が亡くなった。制圧によって死亡する人がいる 。制圧するのであれば、暴行にならないように、ケガをさせないように注意しなければならない。
ちなみに、面会したイラン人はここに来る前は刑務所にいた。刑務所ではそのような暴行行為はなかった。刑務所の職員は服役囚にたいして、いっさい手をださなかったといっていた。ところが、入管に収容されたら、トラブルがあるたびに職員によって制圧され、保護室にいれられた。
支援団体からのコメント
牛久市の東日本入国管理センターでは、血液検査などが健診の項目として実施されている。自動血液検査機があるので、検査機関に依頼しなくても、看護師が採血するだけで、手軽に検査結果をだすことができる。結果の判断は、もちろん医師である。
そして、検査結果を本人につたえるのは、医療現場では当然の行為である。それが、正常値であっても、だ。検査結果を被収容者につたえることで、病気にたいする不安をとりのぞけるからである。
Q 6ヶ月以上収容されている被収容者が対象であれば、数として少なくなるので、検討可能ではないか。この点を外国人収容所を改善する会による前回の要望書(2017年12月20日付)にしるしたが、検討されているのか。
Q 検査結果を本人にわかりやすくつたえる方法を検討されているのか。ルールブックに、その点を明記してもよいとおもうが、いかがか。
時間の都合で、この項のやりとりはできなかった。
支援団体からのコメント
外国人収容所を改善する会は、緊急事態がおきても適切な対応をしていないことを懸念した。そこで、昨年(2017年)3月に東日本入国管理センターでおきたベトナム人の死亡事件に関連して、2017年7月の要望書に以下のとおりしるした。
① 病状が悪化しても、外部の医療機関につなげていない
② 急変しても、発見がおくれており、救命救急処置が不十分である
③ 救急車をよぶのがきわめておそい
④ 入管医師の質に問題があり、診療内容が不十分である
そして、入管職員がときに詐病としている点 をとりあげ、つぎの点を要望した。
1) 「詐病」と判断するのは、医師でさえ不可能である。できるだけ、外部病院での診断と治療がのぞましい。それができなければ、早期の仮放免である。
2) 意識障害の程度の判定、そして呼吸状態/脈拍把握など把握する訓練を、消防庁職員(救急隊員)と同時に、医療的観点からも医師にしていただくのが適切である。
3) 緊急時に上記項目のチェックリストを作成し、複数の職員によってそれらを判断する形をとってみる。そうすることで、判断の間違いがすくなくなる。
ところが、その後、東京入管局の収容施設でも「入管の虫垂炎発見のおくれ」がみられた(東京新聞記事2018年4月23日)。
Q 職員による救急対応にかんして、緊急時の講習を受けているとのことである。実際にそれは、どのていど有効性をもつのか。たとえば意識障害の判定、呼吸状態/脈拍把握などについては、どこまで職員の理解がすすんでいるのか。わたしたちの要望のとおりに対応していただけたのか。
●福山局長
報道の記事は事実誤認である。そもそも腹膜炎にはいくつか種類がある。記事では、「限局性」という言葉をわざと抜いている。「限局性」の反対は「広汎性」だとおもう。清宮選手も限局性腹膜炎で10日間入院したというニュースがあった。3日前から不調を訴えていて、入院した。本件については、上川法務大臣が7月24日記者会見した。法務省のホームページにもある。
救急対応について。入国警備官は初任科研修をうける。そこで救急法を受講するので、基礎的な知識は身につけている。また、処遇部門では、東京消防庁で看護の応急処置の講習を受けた者が3名おり、その者たちが他の職員におしえている。監視職員の救命処置について一定の知識をもっている。ちなみに私も救急救命の講習を受け、知識はある。方法が変わったこともしっている。
体調不良者を発見したときは、通常3名で血圧測定、体温測定を行って病歴を確認する。それ以上の医療的判断はしない。医師、看護師、准看護師資格を有する入国警備官の指示に従う。時間帯によって職員が対応せざるをえない場合、体温測定や血圧測定等をおこなって異常がみうけられたり、重篤な症状とおもわれるときは、躊躇せずに救急搬送をおこなっている。
Q どの時点で、だれが、どのような判断で救急車を呼ぶことになっているのか。
●福山局長
意識がない、呼吸がない、激しい痛みをうったえる。これらの症状がでたときは、急を要するとおもわれときは、躊躇することなく救急車をよぶ。救急車の要請は首席入国警備官、統括入国警備官がおこなうが、その指示をうける時間がないときは責任者の指示でおこなう。責任者は平日夜間休日にかかわらず、重篤とおもわれるとき、急を要するとおもわれるとき、判断にまようときは、躊躇することなく119番に通報する。
Q 外部病院での治療や入院は、だれが、どのように判断しているのか。
●福山局長
基本的には、内部の医師が外部病院での診察が必要と判断したときにおこなう。
●山村
まず、記事にある腹膜炎が事実誤認であるとの指摘について。彼の場合、もともと虫垂炎だけであったものが、1日放置したことによって限局性腹膜炎になってしまった。かりに、それをさらに放置すれば、広汎性腹膜炎になったであろう。そのような流れであり、記事の内容は間違いっていない。
つぎに、意識障害のときに救急車をよぶとのことだが、おそらく皆さんは、消防隊から頭、胸、背中などの注意すべき症状について、講習をうけているとおもう。
現在、被収容者の高齢化がすすんでいる。東京入管では2010年、ビルマのロヒンギャ族の人がクモ膜下出血、2012年にはスリランカ人が心筋梗塞で亡くなった。心筋梗塞のスリランカ人の場合、胸の痛みをかなり訴えていたが、鎮痛剤しか投与されなかったことが、わたしの調査でわかった。
きちんとした診断(判断)は、医療従事者でないかぎり、不可能である。職員は講習をうけているとのことだが、やはり実際に、それらの病気を経験しないとわからない。現場の医療従事者から、どういう状態のときに救急車を呼ぶかなど、救急医療の講習の機会をもうけたほうがよい。
それから、これは入管本省からの通達に、「外部診療の場合、保険点数1点10円で計算する医療機関を受診しなさい」という内容がある。わたしが調べたところ、品川周辺には1点10円計算の病院はなく、東京高輪病院では1点20円計算である。医療費抑制が言われている今、連れて行こうにも、連れていけないと思う。1点10円計算の病院を都内で見つけるのはむつかしい。東京高輪病院で1点10円計算にしてもらえるように、交渉するしかないのではないか。
支援団体からのコメント
全国の収容施設では、被収容者数が減少しているにもかかわらず、自殺未遂者(自傷行為者)は毎年約40人となっている。実際に自殺をはかる人はあとをたたない(下図)。東京入管においては、2009年に中国人の自殺が1件あった。
また、今年(2017年)9月29日にトルコ国籍のクルド人がシャンプー300mlを飲んで、自殺未遂した。自殺未遂者への対応は、独居房にいれている。しかし、それは逆効果となる。
図2 全国の外国人収容所での自殺未遂と死亡(自殺をふくむ)
Q 自殺未遂者を独居房にいれています。その理由はなんでしょうか。そして、それはだれの判断でしょうか。
Q 自殺未遂者数をへらすには、収容環境の改善および仮放免が効果的ではないか、とおもいます。自殺防止について、どのような対応をおこなっているのでしょうか。
時間の都合で、この項のやりとりはできなかった。
支援団体からのコメント
外国人収容所を改善する会との話し合いのなかで、大村入国管理センターへの移送は、総合的な判断にもとづいているとのことだった。おそらく、大村入国管理センターの空き状況も考慮されていることだろう。ここに、各収容施設の充足率をしめす(図3)。
図3 収容所の充足率(その年のある日の時点)
2015年9月には、西日本入国管理センターが閉鎖された。それまでの各収容施設の充足率をみるかぎり、閉鎖するのは、むしろ大村入国管理センターであった。ここに、法務省・入管のあやまった判断がみてとれる。
ある被収容者は、保証人が東京在住で、仮放免先住所が群馬県であるにもかかわらず、大村入国管理センターに移送された。日本語をじゅうぶん話せない彼が、仮放免された場合、長崎県の支援者の助けをかりなければ、群馬県の仮放免先住所までたどりつくのは不可能である。しかも、友人・弁護士・保証人などとの連絡が、ほとんどできなくなった。
Q 移送するのであれば、とおくの大村入国管理センターではなく、ちかくの東日本入国管理センターにするのが、理にかなっている。東日本入国管理センターの充足率は2018年6月時点で40%である。あいている部屋は、たくさんある。
●福山局長
移送については、こちらの状況と受けとってもらえる官舎の状況など総合的に判断して決めている。東日本入国管理センターの充足率(収容率)については、可能な限り、被収容者により良好な収容環境を提供することを考慮している。そういうことをかんがえて、移送することもある。
Q「総合的な判断」をする際に大村入国管理センターされたあとの不便さ ―― 外部連絡の困難、仮放免後の不便な交通と高額な交通費 ―― を考慮しているのか。
●福山局長
大村センターでは、電話等外部との連絡は可能である。一般論でいえば、退去強制令書を受けた外国人を送還までの間収容しているにすぎないので、仮放免が許可されることを前提で収容しているわけではない。くわえて、もし仮放免が許可された場合、仮放免中の生活等にかかわる費用については、身元保証人によって負担されるべきとかんがえている。
時間の都合で、この項のやりとりは十分できなかった。
支援団体からのコメント
東京入管の収容場は、短期期間の収容という位置づけであった。ところが、女性の被収容者すべてが東京入管に収容されることになり、そのなかから長期間収容される人もでてきた。
Q 女性の収容を東京入管に集中させたのは、なぜか。
●福山局長
収容が長期化する被収容者がふえている。こちらに女性を集中させることによって、適正な処遇を実施する。当分の間こちらに収集させる予定である。
Q 短期間収容するという東京入管局の収容施設に、長期の被収容者がふえている。その矛盾を説明していただけないか。
●福山局長
入管収容所は刑事施設ではない。被収容者にたいして退去強制令を執行することによって、拘束状態をとくことができる。その意味では、ひらかれている。しかし、現状においては退去強制令書が発布されたにもかかわらず、日本での稼働や定住のために送還を忌避する被収容者が数多く存在する。その結果、収容が長期化する。
本来であれば、長期収容者を収容するのに適した施設は入国管理センターである。送還を忌避する被収容者にたいして、ここは十分であるとはいえないが、当分のあいだ長期収容者も収容する。
●山村
では、変わる可能性もあるのか?
●福山局長
ある。
●山村
昨日(7月23日)、東日本入国管理センターを訪問して、意見交換をおこなった。驚いたことに、一時期男性のシャワー室に監視カメラを設置していた。それについて、「ここがもし女性用のシャワー室であったら、設置するのか?」と質問すると、「おく」というこたえだった。
今日の見学で、監視カメラとモニター画面をみせてもらったが、居室等におくのはプライバシー上好ましくないから置いていないとのことだった。それが、普通の感覚であろう。東日本入国管理センターでの発言「女性用シャワー室でも、監視カメラを置く」について、どうおもうか?
●福山局長
わたしがもし牛久のセンターの所長であったら、実際におくかどうかはわからないが、そういうことはかんがえる、とおもう。というのも、実際にシャワー室で自殺がおきている。事故をおこさないためには、どうすればいいのか、かんがえる。いろいろ選択肢があるなかで、カメラはでてくる、とおもう。やる、やらないは、別だが。
●山村
シャワー室で器物破損があったので、それを防止するために設置したとのことだった。自殺防止もふくまれているかもしれないが、器物破損を防止するほうが目的になっている。
時間の都合で、この項のやりとりは十分できなかった。
支援団体からのコメント
入管職員によれば、難民審査参与員は「公正な判断をする」「国際情勢などに熟知した」人たちとのことである。ところが、全国難民弁護団連絡会議の「難民参与員の問題発言・行動に対する申入書」(2017年9月12日)によれば、参与員から
「美人だから狙われたのか」
「普通に考えれば難民として認めてくれる国を選ぶのではないですか」
「あなたはキリスト教徒ではない」
動物になぞらえた「OO(*キャラクターの名前)並みの知能、という訳か」
などの発言があった。マスメディアによっても報道されたので、すでにご存知かとおもう。一昨年(2016年)にも、
「あなたは難民としては元気すぎる。本当の難民はもっと力がない」
という発言がみられた。
下図に難民認定率をしめす(図4)。
図4 難民認定率 一次申請と異議申し立て 4年ごとの合算
2017年では異議申し立ての難民認定者はたった1人(認定率は0%)となっており、難民審査参与員制度導入前よりもひくくなっている。難民審査参与員の知的レベルのひくさが、そのまま難民認定率のひくさに反映している、といえる。
Q 前述の発言した難民審査参与員は、はたして「公正な判断をする」、「国際情勢などに熟知した」人たちなのか。「ルールを守って国際化」している人たちなのか。
Q 難民審査参与員制度を廃止の方向で検討してはどうか。そうでないと、入管も同程度の知的レベルと勘ちがいされる。
時間の都合で、この項のやりとりはできなかった。
支援団体からのコメント
外国人収容所を改善する会との話し合いのなかで、難民調査官は「温和を旨とし」「いたずらに不安をあおりたてない」「予断や偏見をもたず」「十分な研修をおこない」とのことであった。しかしいっぽうで、関東弁護士会連合会の調査では、「粗暴行為」「罵倒」「配慮欠如」と記載されている。調査官の態度に、その疑いはぬぐいきれない。どちらが本当なのか、それとも両方とも事実なのか、判然としない。
Q 難民調査官もまた、参与員とおなじ知的レベルの言動をとっているのか。「ルールを守って国際化」している人たちなのか。
Q 難民調査官調査時のインタビュー録音、あるいは可視化はかんがえていないのか。
時間の都合で、この項のやりとりはできなかった。
支援団体からのコメント
2018年7月、ある難民申請者が妊娠中の妻(日本人)とともに、3階の難民申請の窓口にでむいた。すると担当の入管職員から
「うまれる赤ちゃんは日本人になるけれど、そのこととあなたの在留許可は関係ない」
「在留許可は出ないとおもうから、国に帰ってください」
といわれたそうです。その職員の名前はタツミ・トモヒロ氏です。
Q 局長は、難民申請の窓口で判断するような言動を指示しているのか。
入管職員の研修があるときいている。職員研修の一部として、そのような言動をとりいれているのか。
●福山局長
難民認定窓口などでいろいろ確認しなければならないことはあり、答えなければいけないことがある。そのときは、当然、いたずらに余談偏見をもつことなく、良識をもって対応するようにしている。難民認定を希望する者に配慮を心がけること、いたずらに不安感を助長しない、難民認定制度の趣旨を適切に説明することを指示している。
Q 難民申請窓口の職員タツミ・トモヒロ氏もまた、参与員や調査官とおなじ知的レベルの言動をとっているようだ。彼は「ルールを守って国際化」している人なのか。
●福山局長
具体的に名前がでているが、この職員は日頃から適切な対応をとっている。彼が発言したとは、とうていおもえない。
●山村
こちらでは、彼がそのような言動をとったと聞いている。そのことを踏まえて指導してほしい。
支援団体からのコメント
日本が批准している国際条約のなかに、自由権規約・社会権規約・人種差別撤廃条約・女性差別禁止条約・拷問等禁止条約・子どもの権利条約などがある「。難民および外国人収容所にかんして、各条約委員会から日本政府への勧告があたえられている(表1)。
これをみると、どの委員会も、おなじ勧告である。これは、日本政府が勧告を無視しているからにほかならない。日本政府は対話がない、と各委員会はなげいている。
日本政府は、非正規滞在者を‘不法’としてきびしい処罰でのぞんでいるが、国際社会において、国際人権条約をまもらない‘不法’状態をながくつづけている。国際的なルールを守らず、非国際化しているかのようだ。
表1 国際人権条約機関の日本政府への勧告
Q 冒頭でかかげた品川駅構内の横断幕は、昨年(2017年)および今年(2018年)の6月にはみられなかった。それは、なぜなのか。「非国際的」で、ふさわしくないと判断したからなのか。
●福山局長
横断幕は品川駅ではなく、玄関に掲示するようにした。
●山村
なぜか? 前回の話し合いでは、予算の都合ときいた。それから、PRのためにティッシュペーパーを配っている、ともきいた。
●福山局長
駅構内に掲示するとお金がかかる。それは東京にかぎらず、大阪でも同じことをおこなっている。ティッシュペーパーは品川駅でくばった。
●山本太郎
難民認定申請者や被収容者にたいする言動で、適切に指示しているという件について。今日職員の人たちと話をしてみて、すごく真面目に仕事をされていると思った。
しかし、わたしは他の支援団体とのつながりもある。その人たちから、職員の言動の中にはかなり差別的なものもある、ときいた。入管収容所はかなり閉じられた世界だとおもう。
つまり、外部の人たちが入り込めない世界で、被収容者と管理する側の立場の違いがはっきりしている。だから、差別的な言動が生まれかねない状況だ。
被収容者は犯罪者ではない。もちろん、なかには犯罪に手を染めた人もいるが、その人たちは刑務所にはいって罪をつぐなった。建前ではあるが、ここにいるのは帰るまでの間の手続きである。被収容者は、差別的で高圧的な処遇をうける立場の人ではない。
もちろん、刑務所であっても、差別的な処遇をうけるべきではない。被収容者は犯罪をおこしたわけではなく、これからどうするのかという点でここに留めおかれている人なのであって、そのことをふまえると、被収容者に対する気遣いが必要である。
もちろん、予算は限られているが、「ない」とシャッターをおろすのではなく、気遣いをしてほしいし、こちらの願いを共有してほしい。
被収容者にたいする言動については、他の支援者からもきいた。被収容者をあつかう際、相手を下にみている。かなり差別意識をもって接しているということは、入管問題に取り組む人たちにとって当たり前の話になっている。
●福山局長
差別意識について。ヘイトみたいなことになると、わたし達にとっても命とりになる、とかんがえている。今後は、そのようなことにならないように、常に職員の教育にあたりたい、とおもう。
東京入管局での対話風景
支援団体のメンバー(前方) 東京入管局の管理職員(後方)
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