質問主意書
ずさんな原発避難計画策定、国は自治体に対する支援内容を公表せず
2022年12月20日
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第210回国会(臨時会)質問主意書
原発避難計画の策定に対する国の支援に関する質問主意書
概要
茨城県東海第二原発の周辺約30km圏を対象に策定される避難計画では、対象住民の数が90万人を超える。避難先の施設確保が困難になることは明らか。東海第二避難計画では、避難先の施設の面積を一人当たり二㎡という非現実的な面積割り当てをするだけでなく、面積の数字合わせのためにトイレや倉庫の面積も割り当てるずさんな計画となっていた。
避難計画を策定するのは自治体だが、国(内閣府)の地域防災協議会作業部会で策定支援し計画の充実化、実効性向上を図ることになっている。この作業部会でどんな支援をしたら、避難所のトイレで生活するような計画ができるのか。作業部会の記録公開を求めたところ、1~2枚の議事概要以外は作成しない、録音データも公表しないと拒否。
質問本文
質問第68号
原発避難計画の策定に対する国の支援に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第74条によって提出する。 令和4年12月9日 山本 太郎
参議院議長 尾辻 秀久 殿 原発避難計画の策定に対する国の支援に関する質問主意書 原子力規制委員会が定めた原子力災害対策指針によれば、災害対策重点区域内の自治体に対して原子力災害に備えた避難計画をあらかじめ策定しておくよう求めている。計画策定に関しては、国の原子力防災会議が平成25年9月3日に発表した「地域防災計画の充実に向けた今後の対応」において、内閣府原子力災害対策担当室(現内閣府原子力防災担当)が避難計画の充実化を支援すると定められている。内閣府の支援を受けて自治体が策定した避難計画を含む緊急時対応は原子力防災会議において了承を受けるものと承知している。内閣府による計画策定支援について、以下質問する。 1 原子力防災会議における過去の緊急時対応の了承事例を見ると、新規制基準に基づく安全審査に合格した後、当該原発が再稼働する前に了承されている。法的には明確にされていないが、避難計画が未策定であれば緊急時対応の了承はできず、緊急時対応の了承がなければ再稼働は実質的にできない、との考え方に政府は同意するか。 2 岸田文雄総理大臣は令和4年8月24日に行われた「GX実行会議」において、来年夏以降に日本原子力発電東海第二原子力発電所を含む原発七基の再稼働を目指す方針を示した。しかし、同原発30キロ圏内の災害重点対策区域内にある14市町村のうち、避難計画を策定済みであるのは5市町にとどまり、令和3年3月18日の水戸地裁判決は「原子力災害対策指針の想定する段階的避難等の防護措置が実現可能な避難計画及びこれを実行し得る体制が整えられているというにはほど遠い状態にある」として、運転(再稼働)してはならないと命じた。実現可能な避難計画及び当該避難計画を実行し得る体制が整っていないと司法が判断する状況があっても、同原発の再稼働を認める意思があるのか、政府の見解を求める。 3 内閣府政策統括官(原子力防災担当)が平成27年3月20日に公表した「地域原子力防災協議会の設置について」によると、原発のある十三地域ごとに地域原子力防災協議会(以下「協議会」という。)を設置するとともに、各協議会に作業部会を設置することとされた。また、内閣府原子力防災担当は協議会における協議等を踏まえ計画の具体化・充実化にかかる支援を行い、協議会においては、避難計画を含む緊急時対応が具体的かつ合理的なものであることの確認を行うこととされている。内閣府原子力防災担当のホームページで公表されている各協議会の活動状況を見ると、東海第二地域ではこれまで一度も協議会が開かれていない一方で、作業部会は計11回開催されている。これを踏まえると、作業部会は策定支援の重要な会議体であるものと考える。作業部会の役割及び詳細な作業・議論の内容について明らかにされたい。 4 前述のホームページを詳細に見ると、作業部会については、出席者や発言者が記載されていない1~2枚程度の簡単な議事概要だけで、詳細な議事録は公表されていない。「行政文書の管理に関するガイドライン」では、経緯も含めた意思決定過程及び政策立案や事務・事業の方針に影響を及ぼす打合せ等の記録については文書を作成するよう求めている。避難計画策定に関わる重要な会議体であることから、計画の実効性を外部からも検証できるよう、作業部会を公開するか、あるいは出席者や発言者を明記した作業部会の逐語の議事録を作成して公表するか、議事録及び音声記録の行政文書開示請求を受けた場合には開示すべきものと考えるが、政府の見解を求める。 5 協議会及び作業部会の設置以前は、原発のある地域ごとに設置されたワーキングチームの会議において策定支援が行われていた。平成26年9月26日に開催された東海第二地域ワーキングチームの第2回会議については、出席者及び発言者を明記した逐語の議事録が作成され、行政文書の開示請求に対して開示されたものと承知している。作業部会に移行後は逐語の議事録が作成されていないか、あるいは未作成を理由に開示していないとすれば、意思決定過程の透明性が著しく低下したことになる。なぜこのような変更を行ったのか見解を求めるとともに、逐語の議事録及び音声記録を公開すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。 右質問する。 |
答弁本文
内閣参質210第68号 令和4年12月20日 内閣総理大臣 岸田 文雄
参議院議長 尾辻 秀久 殿 参議院議員山本太郎君提出原発避難計画の策定に対する国の支援に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員山本太郎君提出原発避難計画の策定に対する国の支援に関する質問に対する答弁書 1について お尋ねについては、令和2年11月4日の衆議院予算委員会において、菅内閣総理大臣(当時)が「我が国において、しっかりとした避難計画がない中で再稼働が実態として進むことはない、そういうふうに思います」と答弁しているとおりである。 2について 御指摘の訴訟については、政府は当事者ではないが、いずれにせよ、政府としては、原子力発電所の再稼働については、「エネルギー基本計画」(令和3年10月22日閣議決定)に記載しているとおり、「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」ことを方針としており、御指摘の日本原子力発電株式会社東海第二発電所の再稼働についても、同方針に基づいて取り組んでいく考えである。 3から5までについて 「作業部会」は、関係省庁の職員や副知事から成る各地域の地域原子力防災協議会の構成員を補佐するとともに、地域ごとの課題や事情に応じた実務レベルの検討を行うために、各地域の地域原子力防災協議会に置かれているものであり、原子力災害が発生した場合における住民等の避難方法や国からの支援等について議論を行っている。 同作業部会の運営に係る公文書の管理については、公文書等の管理に関する法律(平成21年法律第66号)において、行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程及び事務等の実績を把握できる文書の作成が求められており、内閣府本府行政文書管理規則(平成23年内閣府訓令第10号)第12条第1項に基づき同作業部会の議事概要を作成し、これを公表することにより、同作業部会における議論の内容についての情報の公開に努めているところ、同作業部会自体の公開は考えておらず、また、「逐語の議事録」及び「音声記録」の作成は行っていない。 御指摘の「ワーキングチーム」については、原子力発電所の所在する地域ごとに設置された地域原子力防災協議会にその役割が移行されたものであり、御指摘のように「作業部会に移行」したものではない。同協議会については、議事要旨を作成・公表しているところであり、同協議会において「逐語の議事録」を作成していないことについては、先に述べた考え方によるものである。 |
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